地球と環境の成り立ちを現場で感じて理解する

多田 隆治(地球惑星科学専攻 教授)

図1

野外調査,巡検,および室内実習風景

図2

地球惑星環境学科の3つのコースのコース必修科目(全体の選択必修科目:黒字)と全体の必修科目(赤字)。コース推奨科目(選択科目)は,スペースの都合で示されていない。

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21世紀を迎えたいま,人類は地球環境変化,それに伴う生物の絶滅,自然災害の増大,エネルギー・資源の枯渇といったさまざまな危機に直面している。しかし,こうした人類が抱える地球の諸問題に対するこれまでの対応は個別対処的であり,必ずしも地球の仕組みやその環境の成り立ち,地球と生命のかかわりを十分に理解した上での本質的解決ではなかった。こうした問題を真に解決するには,地球を多数のサブシステムが組み合わさった複雑なシステムからなるひとつの惑星としてとらえ,さまざまなタイムスケール,空間スケールで問題を把握する必要がある。そのためには,物理学,化学,あるいは生物学的手法を駆使して,地球を構成するサブシステム間の相互作用をひとつひとつ解き明かすことが不可欠である。

こうした認識のもと,地球惑星環境学科では, i) 地球をひとつの惑星としてとらえ,地質学,鉱物学,地理学,地球物理学,地球化学,地球生物学などの視点から,人類が抱える地球の諸問題を多角的に考える, ii) 現場に行って五感で現象をとらえ,分析,実験,解析などの手法を通じてその本質を探る, iii) その結果をもとに,巨大複合システムとしての地球を統合的に理解し,その中に人類が抱える地球の諸問題を位置づける視点を養うことを目指した教育を行っている。とくに,野外での観察や採取した試料の分析を通じた自然現象の実証的理解,さまざまな時間・空間スケールで現象をとらえる能力の育成,それらに必要な基礎学力と論理的思考の研鑽に重点を置いた教育を行っている。また,グローバルな視野をもち,国際的な場で活躍できる人材の育成にも力を入れている。

コース制

こうした教育目標をより円滑に達成するため,地球惑星環境学科では,本年度3年生より,カリキュラムにコース制を導入した。ここでいうコース制は,「コースメニューを提示して,それに沿った履修を指導するシステム」というべきもので,便覧には掲載されていない。コース制導入のために,これまで3年次の必修であった科目の一部を選択必修に変え,3年次における科目選択の自由度を高めた(詳しくは,学科HPを参照)。本学科を卒業するのに必要な要件は,便覧に記載されている通りである。進学時にコースをあらかじめ選択する必要はなく, 3年次に授業を履修する過程で,自分がやりたい事に合ったコースメニューを履修してゆけば良い。意欲がある人は,複数のコースメニューを履修することも可能である。コースメニューは,本学科がカバーする分野を明示して,その分野を志す学生が,本学科の多様な講義・演習・実習を,正しい順序で系統的に履修するための指針である。基礎学力を身につけた上で,興味のある分野を絞り込み,その分野に関する知識や学力を効果的に身につけられるように,以下の3つのコースを設定している。

I) 生命・環境学コース:
フィールド教育を通じて,現在の環境・生態,地球史を通じた生命と環境の共進化を学ぶことにより,現在の環境・生態を地球環境進化史の中に位置づける視点を養い,それを基に未来の地球環境のあるべき姿について考える。
II) 地球惑星ダイナミクスコース:
環境変動の内部原因となる地震・火山・地殻変動,大山脈や海の形成などを学ぶ。また,それらの実態解明のため,地形や岩石・地層に記録された変形・破壊・流動・熔融などの理論,観察・観測,実験などの方法を学ぶ。その延長として自然災害予測・防災についても考える。
III) 地球惑星物質科学コース:
地球や他の惑星を構成する岩石・ 鉱物・生体物質についてさまざまなスケールでの観察,化学・構造分析,実験を行ってその制御要因を探り,地球をはじめとした惑星物質の形成と進化について実証的に学ぶ。その延長として,エネルギー・資源探査などについても考える。

各コースのメニューは,全コース共通の必須科目,そのコースの教育の基礎をなすコース必修科目(選択必修科目のうち,各コースにとって必要な科目),そこで学んだ基礎がどう応用されるかを学ぶコース推奨科目(選択科目)からなる。表に各コースのコース必修科目を全体の必修科目と共に示す。

野外調査実習と海外巡検

本学科の教育の特色は,実習重視にある。とくに,野外調査実習は,その目玉と言って良い。3年次夏に,それぞれ約1週間,地球惑星環境学野外調査I, II, IIIを行う。Iでは,地層や化石から過去の地球表層で起こった諸現象に関する情報を引き出す方法を,IIでは,現在の地球表層の動態を調べる方法を,IIIでは,地層や岩石・鉱物から固体地球の活動やそれを構成する物質に関する情報を引き出す方法を,学ぶ。これら調査実習の準備として,3年夏学期に地形地質調査法および実習,地球惑星空間情報学および実習,造岩鉱物光学実習などが配置されており,また,3年冬学期には,野外調査実習で学んだことをさらに深める目的で,地球惑星環境学実習が配置されている。また,3年次冬には,地球惑星環境学野外巡検II, IIIがある。これまで,この巡検は海外で行っており,好評を得ている。野外調査実習や巡検には経費がかかるが,本学科では,他大学や公共施設や公用車を利用することで経費を抑えると共に,理学部や地球惑星科学専攻から支援を受けることで,学生の負担を最小限にとどめている。

卒業論文研究

4年次の初めには,自分がやりたい分野やテーマが見えてくる。そこで,4年次の6月頃に自分がやりたいテーマについて作文を書き,それに基づいて面接をして卒論のテーマと指導教員を決める。その後,4年次後期をまるまる費やして卒論研究を行う。海外へ調査に行く者,最先端の機器で分析を行う者,一日中実験に没頭する者などさまざまである。研究の成果は,2月に行われる卒論発表会で発表される。発表会には,教員だけでなく,先輩,後輩も出席し,熱い議論が交わされる。まさに学部生活最後の晴れ舞台で,楽しみにしている学生も多い。