宇宙における生命の普遍性への興味

~松井 孝典 教授 (理学系研究科地球惑星科学専攻、新領域創成科学研究科)~

聞き手:高梨 直紘(天文学専攻 修士課程2年)

今回の研究室探訪は、地球惑星科学専攻所属の松井孝典研究室にお邪魔しました。マスメディアに登場することも多く、文科系の私の両親でさえ知っている松井先生。その素顔に迫りたいと思います。

宇宙における生命の普遍性への興味

高梨:今日はよろしくお願いします。さて、早速ですが、先生の研究について簡単にお聞きしたいと思います。先生の研究室のWEBを拝見しますと、様々な研究テーマを挙げられていらっしゃいましたが、その一番根本にあるモチベーションというのは何でしょうか。

松井:一言で言うと、地球とか、生命の普遍性に対する興味ですね。有機物や生命みたいなものが、この宇宙で普遍性を持ちうるのかという問題意識が、研究をやっている根本にあります。

高梨:最近は文明論も研究されていますね。

松井:さっき地球と生命と言ったけれど、今の地球には文明がある。この文明というものも、宇宙で普遍性をもちうるのか、と思うでしょう?

高梨:思います。

松井:文明とは何かということが自然科学で追求されたことはないですよね。そこでもう一度、文明とは何か、文明と称する生き方とは何かという問題を提起して、考え直してみる。文明と称する生き方を地球というスケールで論じるのなら、我々自然科学者でも文明論を論じることが出来ます。地球や生命、文明の普遍性。本当に普遍なのか、それとも非常に特殊なのか。これが問題意識ですね。

天体衝突の現象解明が鍵

図1:蒸気雲の膨張

図2:クレーターの形成過程

高梨:先生がもっとも力を入れているのはどのような研究ですか。

松井:30何年も研究生活を続けている中で、いろいろなテーマを追求してきましたが、今は天体衝突という現象ひとつに絞ろうとしています。それはなぜかというと、地球を始めとする惑星や衛星が出来る過程、太陽系が出来る過程、その進化の過程、その一番基本となる物理過程は何かというと、実は天体の衝突なんです。これが理解できないと、太陽系の起源も進化も、基本的には理解できません。

もちろん、今までも実験的な研究はありましたが、その多くはかなり現象論的な研究でした。現象論的研究というのは、例えばぶつかると物が壊れる、その壊れるときの条件は何なのか、あるいはクレーターが出来るとき、クレーターの大きさと衝突速度の関係とはなにか、とか、そういう研究です。したがって、太陽系の起源や進化の過程の背後にある衝突現象の物理的あるいは化学的な知見は、まだはっきりと確立していません。たとえば、地球などの大きい天体の場合は、衝突速度が秒速10~20km以上あり、その衝突に伴って起こる現象として重要なのが衝突蒸気雲(注1)の形成です。しかし、この衝突蒸気雲というのが一体どういうものなのか、世界中で誰も理解していないのが現状です。

こうしたことを、実験的にきちんと理解するのが一番重要なポイントというのが、僕の戦略的な判断です。このテーマは今世界中で我々の研究室でしかやっていない研究であり、今後5年間はこの研究を続けます。

しかし、研究しているところが他にないということは、技術的な面で非常に大変ということです。まず、衝突実験用の銃を作らなければならないわけですが、その銃は、秒速10km~20kmを出せて、蒸気雲を生成できなければなりません。そしていざ蒸気雲ができれば、そこで何が起きているのか、その物理的・化学的過程を知るには、その場で現象の時間変化をナノ秒で追跡しなければならない。銃は開発中ですが、うちの研究室ではこうした研究に必要な技術をほとんど持っています。

高梨:その銃は、NASAが持っているようなものとはどう違うんですか。

松井:NASAが持っている銃は秒速がせいぜい8kmです。もっと高速が必要です。衝突蒸気雲といっても、氷や炭酸塩鉱物など蒸発しやすいものだったら10km/s以下と、秒速が遅い銃でもいいのですが、地球などの岩石惑星を作っているような重要な物質である珪酸塩鉱物を蒸発させようとすると、やはり秒速10数kmが必要になります。

高梨:銃ではなく、レーザーなど使って蒸発させるのとはまた違うのでしょうか。

松井:蒸発雲の温度、圧力状態が、レーザーと衝突とでは違う。今まで世界で行われてきたのは、すべてレーザーで蒸発させる実験です。レーザーで作る蒸気雲というのは、物理的に解釈すると、秒速100km以上のもっとずっと早い速度に相当します。我々が考えている天体の衝突条件とはだいぶ違うことがわかります。つまり、レーザーで蒸気雲を作っても、そのまま惑星科学的に重要な問題に適用できない。したがって、実際に衝突実験をやって、その場で出来た蒸気雲の物理的・化学的な性質を理解しないと、太陽系起源論にしても、惑星の起源と進化にしても、次の段階での大きな発展は見込めないのです。このように、今後10年間を見据えた非常に重要なテーマなんです。だから、僕のところではそういうことをやる。

高梨:しばらくは衝突蒸気雲を研究なさるということですね。

松井:とはいえ、現在はまだ他の研究も行っていますが。例えば、カッシーニ計画で、土星の衛星タイタンに惑星探査機が降りますね。

高梨:NASAのホイヘンスによる探査計画ですね。

松井:そのタイタンの大気中でどんな有機物が作られていて、それが氷として地表に堆積していればどんな氷ができるか、という研究もしています。6500万年前の恐竜絶滅の原因として天体衝突が考えられていますが、そのクレーター関連のフィールドワークもしています。

また、火星の内部構造が分化していて、中心にコアがあるとすると、火星のような小さな天体で分化がどうおこるのか?そういう数値シミュレーションも行っています。対象としては、火星よりもっと小さいヴェスタという小惑星も選んでいます。直径500kmくらいの天体でも、コアとマントルと地殻にわかれているんです。不思議でしょう。そういう天体についてもその分化過程を数値計算してみたりしています。

普遍性を持つ宇宙の生物学、アストロバイオロジー

高梨:衝突蒸気雲と、最初におっしゃっていた地球とか生命の普遍性とは、具体的にどのようにつながるんでしょう。

松井:衝突蒸気雲というのは科学のテーマとしてははっきりしていて、物凄く面白い現象です。この現象の解明が進むと、惑星科学的に色々面白いことが解るのです。例えば地球で言えば、原始の大気や海がどう出来るのかということに関連するし、生命の起源と進化にもつながる。というのは、衝突蒸気雲内は非常に温度が高いので、反応が物凄く速く進むからです。

高梨:なるほど。

松井:それが急速に膨張すると、急速に冷却されるわけですが、この現象は複雑な分子を作り出すのに非常に都合が良い。例えば、炭素や窒素、水素、酸素など、生命に必要なものが多く含まれている物質を蒸発させて、生命に必要な分子が蒸気雲の中で作られることは確かめました。ただしこれはレーザー実験ですが、衝突条件下で行っても、ほぼ同じような結果が出るだろうと考えています。例えばシアン化水素やホルムアルデヒドなどができるだろうと。これらは銀河系の分子雲を観測しても見つかる分子なので、いろいろなプロセスで出来るんだろうけど。衝突蒸気雲の中で作られて、しかもそれが雨になって落ちて、海の中に濃集していくというプロセスがあったことがわかると、今度は生命の起源という問題に直接絡んだ議論も出来るようになるわけです。

高梨:そうですね、どんどん繋がっていきますね。

松井:その最初の段階をきちんとやることが必要です。そのようにして生命まで繋がれば、まさにアストロバイオロジーになる。アストロバイオロジーというのは、比較惑星学プラス生物学というようなことです。現在の生物学は地球生物学ですけど、宇宙に拡張しても普遍性を持つ生物学があるとすれば、それはアストロバイオロジーになります。

高梨:もう少しアストロバイオロジーについて説明して頂けますか。

松井:1998年頃に、NASAがアストロバイオロジーという名称を使い始めました。その目標とするところをわかりやすく言うと、我々は何処から来て、何処へ行くのか、宇宙の中で孤独な存在なのか、ということですが、宇宙における生命の起源と進化、分布、そして未来を研究するのがアストロバイオロジーだと再定義し、NASAは、21世紀の宇宙探査、惑星探査をすべてこのアストロバイオロジーを基本にやります、と宣言したのです。

それ以前にも、宇宙生物学や地球圏外生物学があったけど、個別的でしたね。それを全部まとめてやりましょうと。もちろん古生物学も、地球の初期の状態も研究対象になります。たとえばオーストラリアで最古の細胞化石が見つかれば、そこをボーリングしてもっと古い地層で生命の痕跡があるかどうか調べるのもアストロバイオロジーと言えます。

高梨:地下生物圏のような話も全部アストロバイオロジーですか。

松井:そういうことですね。極限環境の生物学というのですが、たとえば火星みたいな惑星の地下や、エウロパのように厚い氷の下の海に生物がいたらどうなるか。極限環境の方が惑星環境としては一般的ですから、地球上での極限的な環境が、太陽系スケールではむしろ一般的かもしれません。そういうところにいる生命を探すと、そういった生命が生命としてはより普遍であるということになるかもしれないのです。

高梨:そうですね。

松井:あるいは、金星の雲のようなところ。あそこは強酸性の状態ですが、地球上から生物を持っていったときに、そういうところでも生き延びる生物がいるかもしれない。そういう極限環境における生物探査もアストロバイオロジー。

それから、ゲノムレベルでいろいろな生物を比較すると、その生物が進化の過程でどのくらい時間的に近いか遠いかということも調べられ、それらもアストロバイオロジーと言えます。物凄く広範囲にわたるのが、アストロバイオロジーなのです。

高梨:アストロバイオロジーと銘打って研究している方は日本ではまだそんなにいないけれど、やっていることを見たらアストロバイオロジーという人がたくさんいるということですね。

松井:やっぱり研究の意識がどこにあるかが重要です。たしかにゲノム生物学を研究している人は現代はたくさんいます。しかし、それを進化と絡めて、進化の何が解るのかといった観点で考えている人はあまりいないわけです。

僕らはそのアストロバイオロジーという分野を日本で作ろうと思っていて、まずはそういう研究者のネットワークみたいなものを作りつつあります。もう100人くらいいますね。国内的には、宇宙生物学会や生命の起源学会、惑星科学会など、関連する学会はたくさんあるので、そういう学・協会を再編してまとめたらどうかという話もあります。去年、東大でアストロバイオロジーの国際シンポも初めて行われ、これから毎年それを続けてやっていこうという動きもあり、日本も世界の中で認知されています。

しかし、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどには、アストロバイオロジーの国の研究機関がありますが、日本にはまだないのです。そのため、アストロバイオロジーの国際的組織みたいなのがあっても、そこに国として正式には加盟できず、オブザーバー的に参加している段階なのです。

そこで僕はとりあえず、東大あたりにアストロバイオロジー・リサーチセンターを作るのが良いかな、と思っています。法人化されたので、民間から少し寄付を仰げばできるのではないかと思っているのですが。

高梨:それはぜひ実現して欲しいですね。

図3:白亜紀第3期衝突の地層(モンカダ層)に見られるイリジウム濃集層と津波の跡

松井:これは旧来の学問を統合するという意味もある、要素還元論あるいは二元論という20世紀までの科学を超えて、新しい21世紀の科学を考えるという場合の、ひとつのモデルケースにもなるかなと思っています。自然科学者として、理学部的に研究するには、二元論と要素還元主義的に、きちっと問題を作ってやらなきゃいけませんが、そういうテーマとしては、天体衝突と地球惑星生命史ということになります。

さらに、我々の研究室では、アストロバイオロジー以外に地球システム論も研究しています。システム論的に、人間圏というものを定義して文明論を展開する。アストロバイオロジーもさすがに、文明論まではカヴァーできないですからね。

比較惑星学プラス(地球)生物学がアストロバイオロジーだとすると、それに文明論を加えた学問をなんと呼ぶか。僕はそれを「チキュウ学」と呼んでいる。「知を求める」と「地球」という星とをかけている。で、「知求学」と呼んでいるんだけど(笑)。そういう試みがあってもいいんじゃないかと思います。

高梨:大学の授業でみても、なかなか、そういう大きな視点に立ったものはないですね。

松井:今の学問は、全体が見えにくくなっている、そのために、停滞感みたいなものがありますよね。優秀な研究者というのは、皆そうとは意識しないでやっているんだけど、戦略的に何かを判断することができる、つまり、個別の学を統合した世界を持っているので個別の世界で何をやるかっていうのがよく見えるんですけど。

高梨:そうですね、自分で全体が見えていないと、なかなか何を言っているのかよくわからないですね。

松井:学生にとってもわかりにくい学問が増えているわけですが、アストロバイオロジーは、ゴールも、全体における個々の関連性も非常にはっきりしています。こういう分野も、将来的に理学部はやっていくべきだと思っています。

惑星科学という分野の創設がスタート地点

高梨:先生はいつ頃、研究者になることを決意されたのですか?

松井:高校から東大を受験する時に、自分の人生どうしたいかと思ったわけです。自分の人生なんだから100%自分の時間、自分がコントロールした時間としてその時間を一生使いたい、と思ったのです。すると、どういう生き方が良いのか。本当は学生でずっといられれば良いんですが(笑)、それでは食べられない。だから、学者がいいだろうと。つまり、大学に行く時から学者になろうと思っていたわけです。問題は、どういう学問をするかでした。

高梨:そして理学を選ばれた。

松井:僕は、当時も今も学問は文学か理学しか無いと思ってます。経済も工学も農学も医学も、これは人間、自然を解明して得た知識の応用に過ぎなくて、自然とは何か、人間とは何かというのを追求するのが学問だと。それをやりたいとなると文学部か理学部しか無い。しかし、文学部にいったら本ばっかり読んで一生過ごさなきゃいけない。これはちょっとしんどいなと(笑)。やっぱり自分の頭で考えたい、それで理学部に行こうと思ったわけです。

ただ、僕らの頃は、天文もそうでしたけど、オーバードクターといって、ドクターは持っていても就職できないという人がごろごろといた。その中でも、地球物理などの分野は、地震研究所などの関連研究機関がたくさんあって、就職口があったんですけど、惑星科学というか、比較惑星学は別で、それをやっているのは僕一人だったんです。だから、最初から日本には就職口は無いだろうと思い、日本での就職はもう諦めて、研究者として人生が送れれば良いのだからアメリカでもいいだろうということで、ドクターをとった後にすぐにNASAに行きました。そして、たまたま向こうに行って1年くらいした頃に、僕が所属していた研究室の竹内均先生から、測地というか地球力学みたいな分野から、もう少し地球惑星、内部物理学みたいな分野に講座を変えたいと連絡がありました。「これから日本も惑星科学が重要になるでしょう。日本で惑星科学という分野を作るというのも重要な仕事ですから、戻って来なさい」というような手紙をもらいまして、戻って来たわけです。

研究のアウトリーチ

高梨:先生はNHKを始めとして様々なメディアで露出されることも多く、研究のアウトリーチ的な活動では先駆者だと思うのですが、いったいどのようなきっかけで始められたのですか。

松井:最初にアメリカから帰って来たばかりの頃、惑星科学というのは日本では物凄く新鮮だったわけです。今の天文学みたいなものです。今、天文学のニュースというとなんでもかんでもマスコミに出るでしょう。それと同じで、なんでもかんでも惑星科学だったんです。当時、惑星の専門家は僕しかいない、と。従って、その頃から、惑星絡みの番組は全部僕が出演することになって。

NHKもその頃は教育チャンネルで科学番組をやっていましたが、NHKの科学番組部では、総合チャンネルのゴールデンアワーにサイエンスをやりたいという悲願があるみたいな感じでした。そんな時、僕がアメリカから帰って来て。惑星とか太陽系というようなテーマでやれば、総合チャンネルで科学番組を放映しても、一般の人にも受けるかもしれないと思ったんでしょうね。それで、「パノラマ太陽系」っていう番組を作ったんです。1980年のことです。

高梨:噂には聞きますが、放送を見たことがないんです。79年生まれなので(笑)。

松井:ああ、そうでしょうね(笑)。この番組では、月・火・水・木・金・土と、月、火星、水星、木星、金星、土星をテーマに、午後7時のニュースの後、7時半から8時まで放送しました。そうしたら、それが大ヒットしてね。それこそ、視聴率30%とかになりました。

高梨:それはすごい視聴率ですね。

松井:昔はNHKでも民放でも30%超える番組があったんですよ。10%、20%では失敗と言われる時代でしたから、そういう意味では成功しました。そこで、NHKスペシャルを科学番組でやるという気運が出て来た。そこで製作されたのが…

高梨:地球大紀行。僕はその世代です。

松井:地球大紀行のシナリオは僕が書いたようなものです。NHKがこういう番組を作りたいと言って来たこの当時、ちょうど僕の頭の中には、地球ができる時に衝突に伴いガスが出て、大気が生まれて、その熱で地表が溶けて、原始大気とマグマの海の溶解平衡で云々というアイディアが出来ていて、数値計算をして論文にする、っていう段階だったんです。だから、NHKに、地球は衝突で生まれて、水蒸気大気が作られて、それが凝縮して海が生まれて、残った二酸化炭素の大気が海に吸収されて減って、という大枠のシナリオを語ってあげました。それに基づいて、地球大紀行が生まれたわけなんです。

高梨:僕が天文学をやろうと思ったのは、地球大紀行を子供の時に見たのがきっかけなので、感謝いたします。社会に科学を広めると言う意味で、研究のアウトリーチといった活動はとても重要ですね。

松井:そういう時代ですね。今は、マスコミに取り上げられると、それを年次報告などに書くのはプラスですが、昔は逆ですからね。その当時はテレビやマスコミに出るっていうのはマイナス以外の何ものでも無かったんです。研究者がテレビなんぞに出るなんてとんでもないという。たまたま運が良かったのは、竹内均先生がテレビに出ていたからです。ですから、同じ研究室からは文句は出なかったんだけど、よそではもう大変でしたよ。竹内さんは教授だから、まぁしょうがないといっても、僕なんか助手でしょう。助手の分際で、しかも惑星科学なんかがテレビなどに出て、と。

高梨:それはますます地球大紀行を作ってくださって有難うございます、と言いたいですね(笑)。

松井:いえいえ(笑)。

自由を謳歌した大学院時代

高梨:大学院の頃は、どんな学生生活を送っていらしたんですか?

松井:僕らのころは本当に自由でした。それこそ世界中を車で回ったりとか。

高梨:それは現理学系研究科長の岡村定矩先生たちとユーラシア大陸を、という話ですか?

松井:良く知ってますね(笑)。あれは半年くらいかけてヨーロッパからアジアを旅行した。

高梨:半年も行かれたんですか?大学院の頃に、ですか?

松井:そうです。そういうことができるような雰囲気だったんです。それだけではなく、僕らはありとあらゆる学内のスポーツ大会に出ていましたね。野球大会、サッカー大会、水上運動会…水上運動会などは出れば大体入賞するほどでしたね。一番良かったのは2位ですけど。

高梨:とても体育会系ですね(笑)

松井:僕らの頃の水上運動会には、百何十廷が参加していて、そのうち6チームが決勝に残れるんですけど、決勝にはほとんど毎回残ってました。ただこれには理由があって、僕らが学生の頃研究室の助手をしていた人は、出身がボート部だったんです。彼は技術が良く分かっていて、僕らをつれて戸田のボート場に行って、水上での練習の前にまず陸上で基礎を教える。十分基礎を習った後でボートに乗って、というのを毎週のようにやっていました。学生生活の頃の思い出というとスポーツしかないですね(笑)

高梨:羨ましい生活ですね。

松井:当時は学部の人数が少なくて大学院も大体皆いけるし、就職もなんとかなった。だから、何か学問的に切磋琢磨しなくてはという雰囲気はあまり無かったですね(笑)。とはいえ僕の場合は、好きなことをやっていて就職口があるなんて考えられなかった。学会だってなかったし、惑星科学なんてそもそもないんだから就職口があるわけないでしょう。そこで研究を発表するといったら京都の基礎物理研究所くらいしかなかった。星形成の研究会に混じって、太陽系だとか惑星がどうとかという話をしていました。まぁいいや、好きなことやるんだからなんとかなるだろう、いざとなれば外国行けば良いんだと、そういう気分でやっていました。

高梨:色々な意味でたくましい学生生活を送ってらしたんですね(笑)。

松井:学問というのは、やはり体力がものをいいますから。体力の無い人は絶対無理です。例えば修士論文をあと一週間でまとめなきゃならないっていう時に、一週間徹夜しても大丈夫というくらいの頑張りが効くかどうか。最後に踏ん張れるかどうかというのが、結構重要なんですよ。したがって遊んでるっていうのは重要ですね。

高梨:肝に命じておきます(笑)。

松井:海外の学会などでも、学会発表が終わってホテルに帰って寝ていたら駄目ですね。そのあと海外の研究者と一緒に食べて飲んで、夜中まで語り合って、翌日また学会に出るという生活が送れないと。海外では評価されないですね。それは結局体力です。時差できつくてとか言っていたら駄目です。最近は僕ももう駄目だけどね(笑)。きついですよ、やっぱり。だけど、過去の蓄積があるから僕くらいの年の人は休んでいてもいいんです。若い人は駄目ですよ。

高梨:気をつけます(笑)。それでは、そろそろ時間になりましたのでこれでインタビューを終わらせて頂きます。貴重な時間をどうもありがとうございました。

用語解説

1. 衝突蒸気雲
小惑星などの天体が衝突した際に、高温のため瞬間的に地殻や天体の構成物質が蒸発して出来る雲のこと。