惑星は8つ

岡村 定矩(天文学専攻 教授)

8月後半にプラハで開かれた第26回国際天文学連合総会は,全世界の注目を浴びる異例のものとなった。太陽系の惑星の定義を決めるという大事件が起きたためである。IAU総会で一票を投じた当事者の立場からこの問題を考えてみる。

惑星という言葉はもともと,恒星の間をさまようような動きをすることから「惑える星」にちなんで付けられた。しかしその「科学的な定義」はこれまで存在しなかった。多分このこと自体が多くの人にとって驚きであったろうが,専門家の間でもそれが必要とすらごく最近まで考えられてはいなかった。1930年の冥王星の発見以来,水金地火木土天海冥の9つが惑星として定着していたからである。とくに冥王星は,太陽系最遠の惑星として,神秘やロマンの対象でもあった。だが冥王星は他の8個の惑星と比べて,軌道の特徴が違ううえに,大きさもだいぶ小さい。しかし, 1つだけなので,冥王星のこの例外的な性質は大きな問題にはならなかった。

ところが,観測技術の進歩により, 1990年代から海王星以遠の領域で次々と天体が発見されはじめた。これらはトランスネプチューニアンオブジェクト(海王星以遠天体)と呼ばれた。そしてついに2005年7月には,冥王星より大きいと考えられる天体が発見された。一部では「太陽系第10番惑星の発見か」との報道もなされた。こうして惑星とは何かを科学的に定義する必要が出てきた。

今回,決まった惑星の定義によれば,冥王星は惑星には分類されない。しかしこれを,冥王星が「降格」されたと受け取るのは適切ではない。冥王星は海王星以遠天体の一つの種族の代表格として新たな地位を与えられたのである。この種族を何と呼ぶかについては来年6月までにIAUが決めることになっている。新しい定義にもとづく惑星以外の太陽系天体の和名は,関係者の協議にもとづき1年以内に決定される見込みである。新しい役者の登場によって,太陽系は広がったのである。科学の進歩により,教科書も書き換えられることを目の当たりにする貴重な出来事であった。

惑星の定義については国立天文台のホームページを参照されたい。

理学系研究科では,おもに地球惑星科学専攻,とくに宇宙惑星科学講座と地球惑星システム科学講座において,惑星に関する研究が行われている。