第6回

天文学教育研究センター(三鷹本部)

吉井 譲(天文学教育研究センター 教授)

天文学教育研究センターのウェブサイト

天文学教育研究センター外観

図1:教育研究棟実験室で組み立て中の赤外線分光器

図2:2m 光赤外線マグナム望遠鏡によって観測された,活動銀河核の明るさの時間変化の写真。中心の巨大ブラックホールにガスが落下することで光っている活動銀河核の可視光と赤外線の変動パターンの時間差から,同銀河核までの距離を直接決定することができる。

図3:チリで運用中のASTEに搭載された超高感度サブミリ波受信機

図4:マゼラン星雲にある150万個の星の変光観測によって発見された新な周期光度関係。進化段階別,振動モード別に色々な系列に別れている。南アフリカ 1.4m 望遠鏡による観測。

図5:高赤方偏移にある超新星の探索。すばる望遠鏡で撮像した視野の中に12個の超新星を発見。

図6:TAO 6.5m 望遠鏡の概念図

理学系研究科附属天文学教育研究センター(通称:天文センター)は,東京大学での天文学,とくに観測面での教育と研究を推進する組織である。三鷹に本部を置き,多様な教育研究を行うとともに,木曾観測所を有し大学天文台としての機能を果たしている。本郷の天文学専攻,ビッグバン宇宙国際研究センター,また大学共同利用機関の国立天文台や宇宙科学研究本部などと密接な関係を保ち,国内外の地上施設や衛星から観測を行い,諸大型装置の研究開発にも積極的に参画している(図1)。

沿革

天文センターは,1988年7月に旧東京大学附属東京天文台が国立天文台に改組された機会に,大学天文台として発足した。1998年度には東京大学重点化構想に基づく大学院部局化にともない大学院化した。2000年3月に教育研究棟が竣工し,国立天文台の一部を間借りした状態から解放され,自前の建物をもつことになった。翌2001年12月には天文学専攻と合同で外部評価を受け,研究,教育,将来計画(後述)が高く評価された。

施設の概要と魅力

本部は武蔵野の広大な敷地の中に国立天文台と隣接している。春は桜が咲き誇り(裏表紙),夏は欝蒼とした樹木が冷気を保ち,秋は銀杏や紅葉がステンドグラスのような色模様を作り,雪が降れば霧氷が林立する銀世界となる。この三鷹キャンパス内に,教育研究棟と学生実習用 30cm 光学望遠鏡がある。教育研究棟は,研究室,学生居室,講義室,実験室などからなる。三鷹キャンパス外にある天文センター施設としては,105cm シュミット望遠鏡を主設備とする木曾観測所,60cm ミリ波広域サーベイ望遠鏡2台(野辺山とチリに設置),2m 光赤外線マグナム望遠鏡(ハワイ州マウイ島ハレヤカラ山頂に設置されているCOE研究施設)がある(図2)。

研究と教育

光赤外線から電波に重点をおいた,銀河天文学,電波天文学,恒星天文学の研究が主体である。銀河天文学では,従来からの銀河構造や銀河進化の研究に加えて,宇宙膨張の速度,ダークエネルギーと深く結びついた宇宙項,ビッグバン以降に放出された放射の総量を与える可視赤外宇宙背景放射,最初の星が宇宙に出現した時期の特定など,宇宙論に関する研究が活発である。電波天文学では,銀河系内やさまざまな銀河核周辺における星間ガスの分布と運動,物理状態を調べる観測を行いながら,他大学や国立天文台と共同で運営している 10m サブミリ波望遠鏡「ASTE」(図3)(チリの高地に設置:標高 4,860m)のための観測機器開発を行っている。

恒星天文学では,大質量星の進化,星形成活動と星間ガスとの相互作用,寿命が尽きようとしている晩期型星の質量放出と進化などが研究の中心となっている。海外研究機関,国内大学,共同利用研究施設との共同研究が活発に行われている。観測は,地上や衛星から行われている。地上観測は,ハワイ,米国本土,チリ,南アフリカ,オーストラリアなど全世界の望遠鏡が目的に応じて使われている(図4,図5)。衛星からの観測には欧州宇宙機関の宇宙赤外線天文台などが使われてきたが,本年2月に打ち上げられた国産赤外線衛星「あかり」(ASTRO-F)による成果に大きな期待が寄せられている。

将来計画

天文センターと天文学専攻は,京都大学の協力を得ながら,東京大学アタカマ天文台(TAO:University of Tokyo Atacama Observatory)計画を推進している。チリ北部アタカマ高原のチャナントール山(標高 5,600m)に口径 6.5m の赤外線望遠鏡を設置して大学天文台を開設しようとするものである。本計画に先立って予備観測を行うための 1m 望遠鏡の製作と設置の予算は科研費として認めらており,2007年度には観測が始まることになっている。計画の本予算は概算要求中であるが,望遠鏡の設計は,外国メーカーと協力しながら,すでに始まっている(図6)。本計画は2001年の外部評価でひじょうに高い評価を受けており,日本学術会議・天文学研究連絡会議からも強い支持が表明されている。2003年には,チリ大学と東京大学との間で学術協定および科学協定が締結され,両大学間での学術交流の促進とTAO計画の推進についての密接な協力体制ができあがっている。TAOは成果の効率を極限まで追求しがちな共同利用型望遠鏡とは相補的な関係にあり,共同利用型施設では通りにくい学生や若手研究者の荒削りなアイデアを尊重する大学天文台である。大学における知的好奇心を大いに刺激せんとする本計画に対して是非ともエールを送ってもらいたい。

Infomation

所在地:
〒181-0015 東京都三鷹市大沢 2-21-1
電話:
0422-34-5021
FAX:
0422-34-5041
URL:
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/index-j.html
アクセス:
JR中央線「武蔵境駅」下車 小田急バス「狛江駅北口行」「狛江営業所行」乗車 天文台前下車
京王線「調布駅」下車小田急バス「武蔵境南口行」または,京王バス「武蔵小金井駅北口行」乗車 天文台前下車