ニュージーランドに眠る太古の地質記録を求めて

ニュージーランドに眠る太古の地質記録を求めて

高橋 聡(地球惑星科学専攻 助教)

私は,およそ2億5千万年前の古生代ー中生代の時代に起きた地球環境異変の実態を解明すべく研究活動を行っている。研究に用いる試料は当時の海で堆積した堆積岩で,各地に地質調査に出かける日々を送っているが,今回はその中でも近年毎年通っているニュージーランドにおける調査活動について紹介したい。

島国であるニュージーランドは,日本と地史に共通点があり,どちらの島々も,基盤岩の多くに海洋プレートの運動により何千kmも遠い遠洋から運ばれてきた海洋堆積岩類が付加体として残されている。この堆積岩類は,何億年も昔の時代の外洋の記録を知ることができる世界的に希少なもので,研究者の注目が集まっている。また,南半球のニュージーランドは日本と季節が逆なので,日本が寒くて調査に向かないときでも,暖かくて日が長いのも大きな利点かもしれない。

ニュージーランドにおいて保存のよい付加体岩石の露頭のほとんどは海沿いに露出している。そこで,あらかじめ潮の満ち引きの時間を調べておき,漁船やウォータータクシー (WaterTaxi) をチャーターして,干潮に作業がはじめられるように,岩石でできた小島や海岸に向かう。潮が引いて地層が見えてきたら,あとは時間との戦いである。調査メンバーで協力をして地質構造図や地層の柱状図を作成し,化石や化学組成分析用のサンプルを採取していく。最近では,過去の地質図や人づての情報をたよりに,年代がまだ明らかになっていなかった未知の地層が露出している場所を探し出し,地層から産する化石の年代を使ってそれらの地層がいつの時代に形成されたものなのか明らかにしている。その結果,ニュージーランドの深海地層を日本や中国の地層と,同じ種類の化石の産出で同時間軸に対比することができ,緯度や水深が異なる中生代三畳紀の地層を比較して当時の地球環境や生物の絶滅と進化の過程を知ることができるようになった。明らかになりつつある遠い過去の各地の環境変動の記録は,われわれ研究者の興味を引いて止まず,採取サンプルの分析結果が出ると次の調査が待ち遠しい思いにかられる。

ニュージーランド北島 アローロックス島にて(右から2番目が筆者)