銀杏並木

銀杏並木

宮下 精二(物理学専攻 教授)

大学は,内外の荒波に揉まれ,激動の時期を迎えている。そのような非常時であるが,少し,ピントのずれた趣味の話をしたい。銀杏は東大のシンボルであるが,実際,構内の銀杏の並木は立派なものである。他大学に赴任していたとき,時々東大キャンパスに来た際には,いろいろな並木,とくに正門からの銀杏並木と,ひとつ北側のケヤキの並木には感心していた。たぶん私たちが学生の頃よりも立派になっているのではないだろうか。

ある秋の紅葉(黄葉?)真っ盛りの日に,写真を撮り始め,その後何年も毎日正門前からの銀杏の写真を撮っている(図)。冬の間は,時計台が見えるので,出勤のタイムカードになっている。冬が過ぎると,若葉が出てきて, 11月の紅葉に負けず,きれいである。その後,だんだん色が濃くなり,また葉っぱも増えてきて,時計台が見えなくなる。その後,夏の間はうっそうとした感じになる。この間,銀杏はエネルギーを蓄えているのであろう。この状況は11月末まで変わらない。そして,独特のにおいとともに,最大のハイライトである紅葉の時期がくる。「金色のちいさきの鳥」の飛び交う様はなかなか圧巻である。春の桜の盛りが短いことはよく言われるが,紅葉の盛りも意外と短い。楽しみにしているが,そのあたりで出張などあると見損なってしまう。紅葉の盛りには,工学部6号館の前の大きな銀杏の木まで寄り道する。道路に積もった落ち葉が絨毯ようになり,独特の雰囲気となる。この間,数日間は落ち葉の掃除がないのは粋な計らいである。落ち葉でなく,ぎんなんの方は結構長い間落下が続く。それを踏む人が多いので臭いが強調されることになる。拾いたい人も多いので,囲いをして栗拾いならぬ「ぎんなん拾い」の入園料をとってはどうかなど思いながら歩いている。それらがかたづけられると,冬の景色に戻る。これはこれでよく見るとなかなかよい。とくに雪の日は趣がある。

このような生活をここ10年ぐらい続けている。今年も,葉が茂りもう時計台が見えなくなった。しばらくは銀杏も充電期間である。昨年からは,時計台の工事が始まり,正面に壁が取り付けられた。また,工事の囲いやトラックが写真に入ってくるようになった。工事が終わった後は,落ち着いたキャンパスが戻ってくることを心待ちにしている。東大が,東大であるためには何が必要なのであるかなど,とりとめのないことを,銀杏並木を通りながら考えることもある。ぎんなん問題はあるが,銀杏並木がずっと守られることを祈っている。

図1

 春

図2

 秋

図3

 夏

図3

 冬

銀杏並木の四季