東大生,ハイデルベルクに散る!?

東大生,ハイデルベルクに散る!?

藤井 宏和(天文学専攻 博士課程1年)

図1

図1:市街地から見上げたハイデルベルク城

一昨年の10月,ドイツのハイデルベルクで宇宙論の国際会議があり,私もポスター発表のために参加した。ハイデルベルクはドイツ南西部に位置し,ドイツ最古(1386年設立!)の大学であるハイデルベルク大学,哀愁あふれる廃墟であるハイデルベルク城などで知られる古都である。

そうそうたる研究者たちに囲まれ,また初めての海外出張ということもあり,「あの人はこんなに若かったのか」「難しい話を聞いた後のコーヒーは格別だ」などと無邪気にはしゃいでいた。また,宇宙の加速膨張の発見に対してノーベル物理学賞が与えられたことが途中で知らされる(余談だが,宇宙が加速膨張している可能性については日本の研究者がいち早く指摘していたことを忘れてはならない)など,研究会は大いに盛り上がった。そこまでは良かったのだが,事件が起きたのは3日目の午後である。

その研究会には"Flash Talk"というセッションがあり,ポスター発表者から選ばれた数名に講演をする機会を設けていた。この奇妙なシステムについては現地に着いてから聞かされたが,どうせ講演者は事前に決まっているのだろうと思っていた。だが,いざ発表されたリストを見てみると自分の名前がある。何かの間違いだろうと思い確認したが,間違いないと言う。しかも発表は翌日である。いくらなんでもと思ったが,"Can you do it ?"などと挑発まがい(?)のことを言われ,これはやるしかない,むしろまたとないチャンスだと思い奮起した。

研究会には一人で参加していたので,ホテルに帰ってスライドをつくり,発表の練習をした。翌日,ほぼぶっつけ本番かつ人生初の英語発表という恐怖の8分間が始まったが,結果は惨憺たるものであった。手足は震え,スライドは前後し,自分でも何を喋っているかわからなくなった。加えてひどかったのは,(ある意味助かったが)質問がひとつもこなかったことである。恥ずかしさと後悔とで胸がいっぱいだったのを覚えている。

チャンスは誰にでも訪れるが,いつ訪れるかはわからない。それをものにするには,常日頃の準備が不可欠である。そのことを痛感した出来事であった。これを読んでいる皆さん(とくに学生)は私のようにならないよう,重々注意していただきたい。

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図2:ハイデルベルク城にて失敗から立ち直ろうとする筆者