似てる?似てない?ドイツ人と日本人

似てる?似てない?ドイツ人と日本人

山崎 詩郎(大阪大学 特任講師)

図1

ドイツ製実験装置を操作する著者

図2

ハンブルグ港にて研究室メンバーと(著者左端)

『4月からくるか?』メール一通で私のドイツ行きが決まった。私は物理学科の長谷川修司先生のご指導のもと,原子1個厚さのシートに流れる電流の物理研究で博士号を取得した。その後,物性研究所の長谷川幸雄研究室の博士研究員となり,走査トンネル顕微鏡という原子が見える顕微鏡を用いた物性研究を行った。どちらの研究室も国際色豊かで,海外ポスドク経験の話をよく聞いた。それらの影響で一度は海外に行って彼らの研究だけでなく,そのやり方を見てこようと決めた。受け入れ先候補のドイツハンブルグ大 (University of Hamburg) のウィーゼンダンガー (R. Wiesendanger) 研究室は分野では世界1,2を争う憧れの研究室だ。ダメ元で英語の履歴書を送ってみたところ,ラッキーなことにちょうど私のこれまでの経験を融合したような新計画が進んでいた。

「Shiro」と書かれたプラカードをもった共同研究者に入国ゲートで迎えられて,私のドイツでの研究生活が始まった。まずむこうの得意技であるスピン偏極走査トンネル顕微鏡の技術を親切に教えていただいた。徐々に研究の内容だけではなくドイツ人の研究のやり方がわかってきた。あるとき実験装置の部品のサイズが合わない問題が見つかった。私は部品を一生懸命やすりで削ったり万力で反ったりしてサイズを微調節しようとしていた。それを見てドイツ人共同研究者は,試しもせずにデザインをやり直そうというのだ。日本人は対症療法,ドイツ人は根本治療を好むという文化の違いが肌で感じられた。これは研究でも同じだった。日本人は目の前にある試料や装置を工夫して手間暇かけて出せる結果を出すという風潮がある。ドイツ人は初めからNature誌に論文を載せるための試料や実験計画,結果をデザインし,短時間で結果を出した。

『ドイツ語は話せる?』日本人から100%聞かれる質問だ。研究室の公用語は完全に英語で,買い物先でも英語が普通に通じる。そのため私は20単語ほどドイツ語を覚えただけで不自由なく生活できた。数字もパンを買うときに便利なようにアインからツヴァイまで覚えただけだ。ドイツ生活でなにより楽しかったのはオクトーバーフェストなどの祭りだ。巨大な仮説会場をつくるパワーとそれを全力で楽しむ陽気さが半端ない。ドイツのそんなところも好きになっていった。

ドイツ滞在も後半に差し掛かる。前半はむこうの技術を習得することが中心だったが,後半は自分の技術を輸出して新プロジェクトを主導しなければならなかった。試料から,実験装置の立ち上げ,実験計画など,すべて自分で決めなければならない。必要に応じてドイツ国内や海外の研究室を訪問し情報集めを行った。海外で自立して研究を遂行するというのは厳しくも素晴らしい経験だった。

2年8ヶ月のドイツ滞在から帰国した時には考え方がだいぶ変わっていた。ドイツの素晴らしさに触れただけではなく,日本がどんなに稀有な素晴らしい国か気づかされた。君も一度海外に飛び出してみよう!

PROFILE

山崎 詩郎(やまざき しろう)

2007年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了 博士(理学)
2007年 東京大学物性研究所 博士研究員
2009年 ハンブルグ大学Wiesendangerグループ 博士研究員
2012年 大阪大学大学院工学研究科 特任講師