カリフォルニアで宇宙科学探査を楽しむ

カリフォルニアで宇宙科学探査を楽しむ

岡 光夫(カリフォルニア大学バークレー校 研究員/Assistant Research Physicist)

図1

2012年は娘の桜子が生まれた

図2

毎週水曜のグループ・ミーティングのメンバー

カリフォルニア大学バークレー校・宇宙科学研究所はこれまで多くの探査機・科学衛星,そして計測機器を開発・運用している。衛星からの科学データを処理するサイエンス・オペレーション・センター (SOC) のみならず,衛星を制御するミッション・オペレーション・センター (MOC) や,11メートルの通信用アンテナまで備えている。大学の一機関がこれだけ揃えているのは世界的にも珍しいだろう。

ここで私が研究しているのは宇宙のプラズマだ。太陽表面ではプラズマの爆発現象「フレア」が起こる。地球周辺には超音速のプラズマと衝撃波の世界が広がる。そんなダイナミックなプラズマのもつ不思議な性質の1つが「粒子加速」だ。たとえば太陽フレアが起こるとプラズマ粒子が瞬時に高エネルギーにまで加速され,宇宙放射線として放出される。しかし,どの粒子がいつどのように加速されるのか,未解明な部分が多い。

折りしもこの原稿を執筆中の2013年5月に大規模な太陽フレアが連続して発生した。太陽硬X線観測衛星RHESSI (Reuven Ramaty High Energy Solar Spectroscopic Imager) のチームがさっそく集められた。分担が割り当てられ,私はX線スペクトルの解析を行った。論文になりそうなデータも見つけたので今後の解析が楽しみだ。ちなみに1ヶ月に1回程度,RHESSIの「運用当番」が回ってきて,1週間,衛星の各種データをチェックする。学会発表は一方的にしゃべればよいが,紛糾することもある運用会議で英語で報告するのはたいへんだ。たまにオペレーション・センターに行く仕事もある。私がパラメータを告げると技術スタッフの方がその場で衛星にコマンドを送ってくれる。緊張するが少し楽しい。

ほかに地球磁気圏探査衛星THEMIS (Time History of Events and Macroscale Interactions during Substorms) にも関わっているがこちらの運用当番は年に数回しか回ってこない。ところで大学院時代は地球惑星科学専攻に在籍し,日本の地球磁気圏探査衛星ジオテイル (Geotail) を使っていた。指導教官だった寺澤敏夫教授(現在は東京大学宇宙線研究所)からは視野を広くもつことを学んだ。そこで今はTHEMISデータで見る地球周辺プラズマの性質と,RHESSIデータで見る太陽プラズマの性質を比較しながら,いろいろ考えをめぐらせている。

現在師事しているタイ・ファン (Tai D. Phan) 博士は,アメリカが来年打ち上げる次期磁気圏探査衛星MMS (Magnetospheric Multi Scale) に関わっておられる。MMSの運用当番が使うソフトウェアが必要で,それを開発する仕事を私にくださった。まだ開発中だが,同じ研究グループのみなさん(写真)にもテストしてもらっている。

宇宙科学はアメリカでも日本でも最先端の研究ができる。大学院への進学や海外への留学を考えているみなさんが,楽しく研究できる道を見つけられるよう願っている。

PROFILE

岡 光夫(おか みつお)

2000年 東京大学理学部地球惑星物理学科卒業
2005年 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士課程単位取得修了 博士(理学)
2005年 京都大学理学研究科附属花山飛騨天文台 機関研究員
2007年 カリフォルニア大学リバーサイド校 日本学術振興会海外特別研究員
2008年 ラバマ大学ハンツビル校 日本学術振興会海外特別研究員
2009年 カリフォルニア大学バークレー校 宇宙科学研究所 研究員 / Assistant Research Physicist