ドイツ バイロイトより地球科学の調べ

ドイツ バイロイトより地球科学の調べ

飯塚 理子(愛媛大学 日本学術振興会特別研究員)

図1

6軸プレスを使った実験の準備

図2

国際色豊かな顔ぶれが集うBGIメンバー(筆者は前2列目中央)

ドイツバイロイト大学 バイエルン地球科学研究所(以下BGI)で,初めての海外研究生活を始めたのは昨年の2012年6月ごろだ。梅雨のジメジメとした季節に,June brideという言葉が相応しい快適な気候のドイツに渡った。バイロイトは熱烈なクラシックファンでなければ知らないほどの小さな街だが,アットホームな雰囲気が漂うこの街が私はすぐに好きになった。

学部4年から博士課程修了まで,地殻化学実験施設の鍵裕之教授のもと,地球深部まで水を運ぶ含水鉱物の圧力応答を調べる高圧実験を行ってきた。地球内部に大量に存在するとされる水(ここではヒドロキシ基O-H)の存在状態について考察するという壮大な研究テーマに取り組み,地球深部に相当する高い圧力を発生させ,水素結合をもつ化合物の結晶構造や物性が圧力とともにどう変化していくかを観察した。特殊な高圧装置群と分光法やX線・中性子回折法などの多角的な測定手法を組み合わせた実験が必須で,学外の大型実験施設で放射光X線やパルス中性子源を使って数日間にわたる集中実験をくりかえした。鍵先生には,果敢に挑戦する機会を数多くいただいた。

博士課程在籍時は,物性研究所の八木健彦教授(現愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター特命教授)のもとで高圧装置の開発にも携わり,モノつくりの醍醐味を味わった。既存の方法では実現できない問題に対して,改良し工夫することで不可能を可能にするという研究の原点に気づかされた。その八木先生からD3の夏に「一緒にバイロイトに行かないか?」と誘われたのがきっかけだった。海外での研究生活を夢見てきた私は「行きます!」と即答。そして,ドイツフンボルト財団のサポートを受けて2012年6-11月,地球惑星科学専攻の海外派遣援助を受けて2013年2-3月の2度にわたり,関連の研究所の中でも欧州のメッカとして知られるBGIに滞在した。ここで大型6軸プレスを使った含水鉱物ローソナイトの変形実験から,沈み込むスラブにおける地震波速度異常について調べた。初めての経験に戸惑うこともあったが,メンバーの丁寧な対応に助けられた。

BGIは国際的な研究拠点で,多彩な国籍のスタッフ陣から成る。所内は英語が公用語とされ,それゆえに,独語も英語も母国語としない研究者が世界中から集う。国を越えた同世代の仲間から刺激を受け合い,ユーモアあふれる彼らとの交流に元気づけられた。滞在当初,研究者と技術者の分業分担の制度に驚いた。日本のように研究者が一からすべてをやることにも良さがあるが,あるレベル以上は専門家に任せるというスタンスに,効率よく研究成果を上げる秘訣と感じた。また, BGIの女性比率が高いことも驚きだった。(男性よりも)エネルギッシュで,はつらつと働く女性研究者の姿に感銘を受けた。このようにドイツに居ながら,日本と世界各国との文化や境遇の違いを所々で垣間見た。

プライベートでは,コンサートに出かけ,郊外のサイクリングロードを自転車で駆け回った。電車に乗り,近くの世界遺産の街も観光した。ちなみに,バイロイトのような小さな街は,日曜は終日閉店する。24時間コンビニなどあるはずもなく,飢え死にしないためにも,日々の研究を効率よく切り上げるコツを必然的に学んだ。日本にくらべると生活の不便さは多々あるが,便利=快適な暮らしにはならないことを,身をもって感じた。実験が失敗して精神的に凹んでいても,街と人の温かさに触れ,すぐに気持ちの切替えができ,毎日が新鮮で充実していた。

2013年7月から,1年の長期滞在を予定している。バイエルン州の豊かな自然に囲まれたBGIで,カッコいい女性研究者を目指してまた頑張りたいと決意を新たに,再渡独を今は心待ちにしている。

PROFILE

飯塚 理子(いいづか りこ)

2007年 東京大学理学部化学科卒業
2012年 東京大学大学院理学系研究科 化学専攻博士課程修了 博士(理学)
2010-2012年 日本学術振興会 特別研究員-DC2
2012年 東京大学大学院理学系研究科 地殻化学実験施設 特任研究員
2013年 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター 日本学術振興会 特別研究員