ドイツでの電子顕微鏡の日々

ドイツでの電子顕微鏡の日々

向井 広樹(ミュンスター大学 博士研究員)

図1

電顕室にて

図2

先生ご夫妻とカフェにて

オランダからほど近くドイツ西部に位置するミュンスターは,大学を中心とした自然豊かで落ち着いた都市であり,中世の雰囲気が残る街並みはひじょうに美しい。自転車の利用が盛んで,東京にくらべると時の流れが随分と緩やかに感じる。私がこのミュンスターで研究生活を始めてからすでに1年半が過ぎている。私にとって外国にこのように長期間滞在するのは始めてのことで,来た当初は思うようにいかないことも多く,買い物ひとつにも戸惑っていた。ただ確かに,自分を取り巻く環境は,日本にいたときから大きく変わったが,研究面では世界共通のものは少なくはなく,周囲の人達の助けもあって,徐々に目の前の研究に集中できるようになってきたように思う。

私は大学院時代,地球惑星科学専攻で小暮敏博先生のもと学位を取得した。研究テーマは生物が関与して形成される固体無機物質「生体鉱物」についてであり,とくに貝殻の真珠層の構造および成長機構について電子顕微鏡を用い研究を行っていた。多様な分野が関わるテーマということもあり,研究の方向性に悩むことも多かったが,そのように悩む中で得られたことが研究者として大きかったように思う。また小暮先生は,早くから高価な実験装置を自由に使用できる環境を与えてくださり,まだまだ未熟ではあるものの,そうした下地が海外で生き残る上で私の強みとなっている。

そして学位取得後ほとんど間もなくミュンスターにやってきて,現在までアンドリュー・プットニス(Andrew Putnis)先生のもとで,大学院時代と変わらず電子顕微鏡を用いて研究を行っている。私がミュンスターに着いたのは真夜中でそれなりに心細かったが,先生が空港までわざわざ迎えに来て下さり随分ほっとしたことを覚えている。そのほか,最初は一緒に買い物に付き合ってくれたり生活に必要なものはすべて揃えてくれたりと,あまりの親切さにこちらが困惑するほどであり,生活・研究の両面でたいへんお世話になっている。また先生ご自身がオーストラリア人なので,外国人として仕事をするということに関してひじょうに勉強になっている。いっぽう,研究室自体もヨーロッパ各地から人が集まっていて国際色豊かであり受ける刺激は強い。今でも私の英語力はあまり褒められたものではないが,そうした中でどうにか周囲の信頼を得ようとミスをしないように研究を進めることは,フラストレーションも少し強いが,日本にいた時とは違った充実感も感じられるのである。

研究を進めるということだけであれば,日本の方が効率よくできることも多いし,英語もやろうと思えば十分日本で学べると思う。ただ外国に身をおいて研究することによって,日本にいるだけでは得られないものを数多く得られるうえに,研究面だけでなく一人の人間としても成長することができると思う。

PROFILE

向井 広樹(むかい ひろき)

2006年 東北大学理学部地球物質科学科 卒業
2008年 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻修士課程修了
2011年 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻博士課程修了 博士(理学)
2011年 東京大学農学生命科学研究科 博士研究員
2011年 ミュンスター大学 博士研究員