「気候変動を理学する」

「気候変動を理学する」

多田 隆治(地球惑星科学専攻 教授)

図1

多田隆治 著「気候変動を理学する」
みすず書房(2013年出版)
ISBN 978-4-622-07749-7

近年,地球温暖化を初めとする人間活動の気候,環境への影響が顕在化するに連れて,世界や国の資源とエネルギー消費のあり方について,一般市民が待ったなしの選択を迫られる場面が増えてきている。そうした選択を悔いなく行うためには,一人一人が人間活動の気候,環境への影響のメカニズムを理解した上で,提示された選択肢の妥当性を判断する。しかし,現状では,根拠となる「科学的」証拠の妥当性を判断するに十分な知識が,一般市民に解りやすい形で与えられていない。専門家の説明は正確で客観的だが,難しくて理解しづらいいっぽう,通俗科学本の多くは,結論のみを主観的に示し,結論に至った科学的検証過程や他の可能性との客観的比較などは示されていない。

筆者は,そうした現状に危機感をもっていたが,タイミング良く,同様の考えをもった日立環境財団の方からサイエンスカフェへのお誘いがあり,2011年に,計5回に渡ってサイエンスカフェで講演した。その時の講演,質疑録を元に書き起こしたのが本書である。参加された聴衆の大部分は理系の大学出身者で,他分野の現役研究者なども居られ,かなりレベルの高い議論がなされたが,専門外の方に背後にある論理も含めて理解していただく事の難しさを改めて痛感させられた。熱意あふれる若手編集者の,素人の視点に立った指摘に助けられつつ,1年近くをかけて何とか原稿を完成させた。

編集部には,「理学する」という言葉が一般人に馴染みがなく,受け入れられないのではないかという危惧もあったようだが,それは杞憂に終わったようだ。「理学する」という言葉に,世の流れに安易に迎合せず,俯瞰的視点から極力客観的,論理的に説明をしたいという思いを込めたつもりである。大学教養レベルを想定してなるべく数式や化学式を使わず,わかり易く書いたので,専門外の方にも,ぜひご一読いただきたい。