「振動・波動」

「振動・波動」

小形 正男(物理学専攻 教授)

図1

小形正男著「波動・振動」裳華房(1999年11月)ISBN978-4785320881

「振動・波動」は,出版社によると理系の本としては隠れたベストセラーであるということである。振動・波動という名前のために,ちょっとマニアックな雰囲気が漂っているが,理学部に進学した後で,分子振動・地震波・電磁波・量子力学の基礎などと深くかかわる分野である。本書の最初では,なぜ振動・波動が身の回りで重要になるかということを書いた。直進運動や放物線運動は一過性のものであるが,回転や振動はその場にとどまった運動なので,身の周りに定常的に見かけることができる。このため振動・波動は理系の研究では重要な概念となるのである。

本書では基準振動の「モード」という概念を全面に押し出して統一的な記述をした。モードの数が1つの場合から始めて,2つの場合,複数の場合,無限大の場合と順に説明していった。無限大の場合は弦の振動で,これが波動に繋がっている。これから自然にフーリエ変換,量子力学の波動,平面波などに発展することができる。

この教科書の特徴(というか,今でも私が読み返す部分)は,各章についている「トピックス」である。たとえば和音,純正調音階,平均律,ブランコの揺らし方,電子レンジの仕組み,ラジオ電波,光速度の測り方などである。実は,調べ始めると相当自明でないことも多く,一番詳しく調べて楽しく書いた部分である。姉妹書に同じシリーズの「量子力学」があるが,そのトピックスの1つでは「鏡で左右逆に見えるのはなぜか?」という大問題に科学的な怪答を与えている。