生物学と人間

生物学と人間

赤坂 甲治(生物科学専攻 教授)

図1

赤坂甲治編「新版生物学と人間」裳華房 (2010年)ISBN978-4-7853-5221-9

「生物学と人間」は15年ほど前に,学生時代からもち続けた篤い生命観を込めて書き始めた本である。教科書というよりは,生物初学者への一研究者のメッセージである。全体の底辺に流れる思想は「宇宙の中では,ビッグバン以来,生物もエネルギー的に低く無秩序な死の世界に向かう流れに逆らうことができず,命は脆いものであること。いっぽう,生物は,この奔流に流されながらも,流れに逆らうように巧妙にしたたかに命をつなげていることである。その立場に立ち,奇跡的とも思える生命のしくみに対する感動を,学生たちに共有してもらうことを目的とした。嬉しいことに,初版以来,何回も版を重ねた。しかし,生物学の進歩は目覚ましく,やがて刷新が必要となり, 2010年に遺伝子とゲノム,発生,進化のしくみ,免疫を大幅に充実させ「新版 生物学と人間」となった。私自身は,教科書として,東京大学生命科学教科書編集委員会による「生命科学」を駒場の講義で用いているが,「生物学と人間」は他の多くの大学で採用されていると聞いている。この本を通じて,人間を特別な存在としてではなく,宇宙,地球の中のひとつの生命体としてとらえ,環境や他の生物とのかかわり合いや進化を考える機会をもっていただければと思う。生物学を学ぶことは,飛躍的に進歩する生命科学が人類に何をもたらすかを考え,生命科学を誤った方向に向かわせないためにも重要である。駒場生にもぜひ読んでいただきたいと願っている。