座談会「ここが魅力! 地球惑星環境学科を語る」
研究対象は奥深い地球の中や海の底から惑星まで。大きな夢を語り、よき仲間に恵まれ、研究者にも企業人になるにも必要な基礎をきっちりつけることができるのが地球惑星環境学科です。ここでは学科の魅力について、4名の先生に語っていただきました。
よい仲間に恵まれ、世界を足で調査する
村上:私たちの学科のよいところは、なんといっても扱う時間や空間のスケールが非常に広く、深い理解に基づき大きな夢を語れることですね。ナノスケールの反応から数千キロに及ぶ地球スケール、さらには惑星まで、時間も46億年前から現在までをひとつのシステムとして理解します。研究者や学生さんの興味に応じた夢を追求できるのも理学部ならではのことだと思います。
棚部:自然と直に接する機会が多いのも魅力です。大学から補助される旅費で野外調査・野外巡検に行くのですが、昨年はオーストラリア、今年は中国に出かけます。山や海が好きな学生さんにはぴったりです。
茅根:野外では、まさに「同じ釜の飯」で学生同士、教員とも語り合って過ごすので、自然と付き合いが濃くなりますね(笑)。学生同士の仲間意識も強く、卒業時のアンケートで皆さん「よい仲間に恵まれた」と書いています。第1期生(2007年卒業)にいたっては、皆で野外巡検に行った場が懐かしかったようで、卒業旅行にも同じ場所に行ったというほどでした。
村上:教員と学生さんの人数比率もだいたい1対1です。卒業研究などについても丁寧な指導を行えることでも、学生さんにとってよい学科だと思います。
おもしろい! 目を輝かせる学生たち
茅根:私の研究現場はサンゴ礁なのですが、学生さんはまったく知らなかった環境に連れていくと目を輝かせて取り組みますね。フィールド調査は炎天下の中で作業しますし、場合によっては夜中も船の上でデータをとるわけです。しかし、そうして得たデータは自分でとったオリジナルなデータで、そこから新しい結果がでるわけです。
棚部:私の専門は古生物学ですが、最近は恐竜に興味をもたれる学生さんが多いです。小さいころから興味をもって、研究室に来る時には最初からこれをやりたいという方がいる。私の主な研究対象は無脊椎動物、とくに軟体動物ですので、それ以外の分類群、例えば脊椎動物や植物の化石を研究したいという学生さんがいる場合は、国内外の博物館や大学の先生を紹介して、できるだけやりたいことをできる環境を整えています。三分の一くらいの学生さんが恐竜を研究し、そのうち半分くらいの学生さんが海外で博士号をとっていますね。
茅根:化石の好きな学生さんは早いころに影響を受ける方が多いようです。
地球惑星環境学科のよいところは、基本的に教員側から「このテーマで研究しなさい」というやり方はしません。講義や実習などを通じて自分が面白いと思ったものを、卒論のテーマとして教員と相談しながら決めていく体制をとっています。与えられたテーマでなく、自分でテーマを選べるのは魅力のひとつでもありますし、それ以上に課題を自ら設定する力がつきます。
三河内:僕は惑星物質科学を専門にしていますが、隕石は太陽系ができたばかりの46億年にできたものなのです。ものすごく昔にできた石、それだけですごく感慨深いものですが、それを自分の手で切ったり刻んだり磨いたりする。学生さんは本当に楽しそうに勉強しますね。
特に僕は火星の隕石を研究することで火星環境を研究していますが、そうするとやはり火星をやりたいといってくる学生さんが多いですね。これまでに50個くらいの火星隕石が見つかっています。
火星には探査機バイキングが着陸して大気の組成分析をしました。直接、地球まで石をもってきたわけではないのですが、隕石に閉じ込められたガスの成分と比較して、この隕石が火星から来たということがわかります。
村上:僕は鉱物と水、大気の相互作用をナノレベルから解析し、地球の何千キロという空間ギャップを埋めていくような研究をしているのですが、学生さんには最初は少しハードルがあって(笑)、勉強してもらうことになります。表面的な理解にしないためには、中味がよくわかっていなければならない。そのために、基本的な課題から積み上げていくように指導しています。
鉛や銅など有害な物も含めた元素の移動と、数十億年前におきた大気の酸素の上昇など、一見関係なさそうだけど実はものすごく関係があって、学生さんは結果がでると、我々研究者と同じように自分のやったことに深い充実感を感じているようですね。
研究者になるにしろ社会に出て働くにしても、自分で最初から考えて作り上げていく喜びをもっている人は強いのではないかと思いますね。
茅根:鉱物学は入ったときにはまったく知らなくても、入ってからのめり込む学生が多いですね。残念ながら高校で地学や地理を受講する学生は減っていますが、それだけに学科にきてからそのおもしろさに気が付く学生さんが多いようです。
忘れられない感動
三河内:研究の面白さ・感動は色々ありますが、自分自身のことを振り返ると、1999年に打ち上げられ、2006年に彗星のチリを採取して初めて地球にもどった無人惑星探査機「スターダスト」のチリを見たときには本当に感動しました。
僕はこのチリを分析するメンバーで、NASAに数日間滞在して分析したのですが、「スターダスト」は地球からものすごく距離の離れた彗星に何年もかけて近付き、テニスラケットのようなものを掲げてチリをトラップしたのです。そう思いを馳せるだけでも、チリを見たときの感動は大きかったですね。
村上:僕は透過顕微鏡で「曲がった結晶」を見たときですね。もう30年前くらいのことで、それまでとは違う新しい分野を始めたときのことです。鉱物は普通、3次元的に原子配列が決まっていて、積み重なっています。ところが、3次元的に積み重なっているのではなく原子が1単位、つまり20オングストローム程度の厚さしかなく、横に広がっている結晶があり、これが途中で曲がっていたのです。「結晶は3次元的なもの」という常識を覆される驚きでした。
結晶は少々のことではこのように曲がらないのですね。実は地球の表面にはそうした結晶がたくさんあって、そこでの相互作用を見ることができるのです。
茅根:私の場合は「こうなるだろう」と仮説をたててフィールド調査に向かったときに、実際に自然がそのような姿をしていたのを目にしたときですね。
2004年12月に20万人が亡くなったスマトラ地震があったのは皆さんも記憶に新しいと思います。この地震の震源地はアンダマン諸島というところで、政府の管轄もままならない原住民の居住域なのですが、そこを抜けて本当に小さな小船に乗って現場に行ったのです。地震で断層がずれたのならば、その地の海底にあるサンゴ礁が海面に隆起しているはずと予想しましたが、それを目にしたときには、「本当に隆起している!」と感動しました。衛星からのリモートセンシングでも見えていましたが、地震の隆起量を具体的に測ることができたのです。
もうひとつ、サンゴ礁がリング状につながってその内側に深さ数10mの浅い海を取り囲む地形を「環礁」といいますが、環礁の島は直径1mm程度の有孔虫の殻が打ち寄せられてできたと考えていました。実際にツバルのある島に行ったところ90%以上が有孔虫からできていたのです。
仮説や予想を建てて、それをフィールドで確認できたときの喜びは何も変えがたいです。これを味わったら絶対やめられません(笑)。
将来についても手厚い地球惑星環境学科
村上:就職を心配される学生さんが多いようですが、地球惑星環境学科はご覧のように大学院に進学するにしろ企業に就職するにしろ、学生さんの希望の通りに進んでいますね。将来についての心配はいりません。(参考リンク:卒業生の進路)
私たちの学科のよいところは、表面的な問題を対処的に対応するのではなく、長い歴史の中から深く考える力を身につけられるという点です。茅根:基本がしっかりして研究者になる人も多いですね。
地球惑星環境学科は、いわゆる「地球環境」だけでなく、地球や惑星の変動のメカニズムを歴史的にも深く理解する研究を行います。しかもそれを知的好奇心に基づいておこなっているわけです。
村上:自分で考えて自分で何かを出すことは、学問の世界では当たり前ですが、社会の中でも基本的な力として必要とされることです。そうした訓練を私たちの学科で積むのは非常によいことだと思いますね。
将来を考え、力をつけたい学生さんに、ぜひとも地球惑星環境学科に進学してほしいです。
(聞き手:横山広美 理学系研究科広報・科学コミュニケーション准教授)


