2017/02/21

灼熱の海王星型惑星K2-105bを発見〜第2の地球探しへの足がかり〜

 

成田 憲保(天文学専攻 助教)

 

発表のポイント

  • 新しい灼熱の海王星型惑星K2-105bを発見した。
  • 主星が比較的明るいため、今後惑星の詳しい性質を調べることができる。
  • 今回の研究手法によって将来、日本の望遠鏡や観測装置で第2の地球を探すことができる。

発表概要

東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の成田憲保助教らの参加する国際研究チームは、NASAが打ち上げたケプラー衛星の観測データと、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡および岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡による地上連携観測から、およそ700光年先にある太陽のような恒星のまわりに、公転周期がたった8.3日ほどしかない灼熱の海王星型惑星(ホットネプチューン)の存在を発見しました。そして、この惑星は「K2-105b」と名付けられました。ホットネプチューンはこれまでもケプラー衛星によって数多く発見されてきましたが、K2-105bはその中でも主星が比較的明るいため、今後惑星の詳しい性質を調べていくことが可能です。また、新しい惑星を発見した今回の研究手法は、2018年3月に打ち上げられる予定のトランジット惑星探索衛星TESS(注1)と地上望遠鏡との連携観測の予行演習とも言うべきものであり、来るTESSの時代に、日本の望遠鏡と観測装置で第2の地球とも呼べる惑星の発見も可能なことを示しています。

発表内容

<本研究の背景>

太陽のような恒星のまわりで惑星が初めて発見されたのは1995年。それから20年あまりが経ち、2017年2月現在では3400個以上の太陽系外惑星が発見されています。特にその約3分の2の惑星は、NASAが2009年に打ち上げたケプラー衛星がトランジット(注2)という現象を用いて発見したものです。

これまでの太陽系外惑星の発見から、宇宙には太陽系の惑星とは全く性質の異なる多様な惑星が存在することが知られています。特に太陽系外惑星の発見初期には、木星のような巨大惑星が主星のすぐそば(公転周期がだいたい10日以下)を公転する灼熱の木星型惑星(ホットジュピター)が多く発見され、太陽系には存在しないホットジュピターの質量・半径や軌道、大気などを調べる研究が進展してきました。

一方、2009年から2013年にかけて行われたケプラー衛星による高精度なトランジット惑星探しでは、ホットジュピターと同じような主星のすぐそばの軌道に地球半径の4倍程度の大きさを持つ灼熱の海王星型惑星(ホットネプチューン)や、地球半径の2〜3倍程度の大きさを持つホットスーパーアース(注3)も発見されてきました。しかし、残念ながらそれらの惑星のほとんどでは惑星の質量や軌道、大気などの性質を調べることができませんでした。これはケプラー衛星が当初観測していた恒星たちは太陽系からかなり遠く(ほとんどはおよそ1000光年以上)、そのため発見された惑星の詳細な性質を調べる観測が困難だったためです。

そんな中、ケプラー衛星は2014年から第2期観測としてK2計画(注4)を開始しました。K2計画では、ケプラー衛星は比較的太陽系に近い恒星も観測するため、そこで小型の惑星が発見できれば惑星の詳細な性質を調べることも可能になると期待されます。

成田助教らは、このK2の観測データを用いてトランジット惑星探しを行う日米欧の研究者からなる国際研究チームESPRINT(注5)に参加し、日本が持つ望遠鏡と観測装置を使った新しい惑星探しを行ってきました。

<本研究の内容>

ケプラー衛星が行っているようなトランジット惑星を探す観測では、恒星の明るさが周期的に減光することによって惑星の候補を発見します。しかしこの候補の中には、トランジット惑星のふりをした食連星という偽物が混入する場合があります(図1)。そのため、本物のトランジット惑星を発見するには、惑星候補が食連星による偽物ではなく本物の惑星であることを確認する「発見確認観測」が必要となります。この発見確認観測をクリアすることで初めて、新しい惑星を発見したと言うことができます。

図1
本物のトランジット惑星と偽物の食連星の概念図。(a)はトランジット惑星で、(b)はお互いをかすめるような軌道を持つ食連星、(c)は食連星の近くに別の恒星がある場合を示している。本物の惑星である(a)の場合には近くに別の恒星はなく、どの波長で観測しても減光の深さはほとんど変わらない。(b)や(c)の場合、減光の深さには大きな波長に依存性があり、異なる波長で見ると減光の深さが大きく変わる。また、(c)のような場合は近くに別の恒星が存在している。そのため、図2や図3のような観測により、惑星候補が本物の惑星かどうか確認することができる。

 

ESPRINTチームは、「EPIC211525389」という恒星におよそ8.3日周期で減光を起こす惑星候補を発見しました。成田助教らはこれに注目し、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡に搭載された可視高分散分光装置HDSと近赤外高コントラスト撮像装置HiCIAO、そして岡山天体物理観測所188cm望遠鏡に搭載された可視3色同時撮像装置MuSCATという3つの観測装置を駆使して、この惑星の発見確認観測に取り組みました。

その結果、(a)EPIC211525389がおよそ700光年先にあり、また太陽に近い質量を持つ恒星であること、(b)EPIC211525389の周囲には偽物の減光を引き起こすような食連星候補の混入はないこと(図2)、(c)EPIC211525389が起こす減光の深さは、どの波長で見てもほぼ同じであること(図3)、(d)EPIC211525389の速度変化の小ささから公転しているのが恒星ではないこと、などを観測することで、減光を起こしているのが間違いなく本物の惑星であるという発見確認を行いました。

図2
すばる望遠鏡の近赤外高コントラスト撮像装置HiCIAOと補償光学装置AO188を組み合わせて撮影されたEPIC211525389の画像。左上の目盛りは1秒角(1度の3600分の1の角度)を表している。画像の上が北で、左が東に相当する。この画像から近くに偽物の減光を起こすような恒星がないことが確認できる。

 

図3
K2-105bのトランジットによる主星の明るさの変化。左の青い点はケプラー衛星で観測された9回のトランジットを重ね合わせたもの。黒い実線はトランジットによる明るさの変化のモデル。トランジットの際に約0.13%だけ減光している。下にプロットされている黒い点は、観測とモデルとの残差。中央と右の赤い点は岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のMuSCATで観測された1回のトランジットで、中央は赤い波長(550-700nm)、右は近赤外線の波長(820-920nm)の光で観測されたもの。ケプラー衛星とMuSCATのそれぞれのトランジットの深さにほとんど違いがなく、どの波長で見ても減光の深さが変わらないことがわかる。

 

これらの発見確認観測によって、この新しい惑星にNASAからK2-105bという名前が与えられました。K2-105bは公転周期がおよそ8.3日で、半径が地球の3.6±0.4倍とほぼ海王星と同じサイズを持つホットネプチューンに分類されます(図4)。この惑星は摂氏5200度ほどもある主星のすぐそばの軌道を公転しているので、その表面温度は摂氏300度以上の高温になっていると考えられます。

図4
太陽に近い質量を持つ恒星(G型星)のまわりで発見された惑星の公転周期と惑星半径の分布。今回発見されたK2-105b(星印)は太陽系の海王星に近い半径を持つホットネプチューンに分類される。

 

<今後の展望と本研究の意義>

K2-105bは、これまでにケプラー衛星で発見されたホットネプチューンの中で主星が比較的明るい(ケプラー衛星の第1期観測でホットネプチューンが発見された典型的な主星に比べて5-15倍程度明るい)ため、今後惑星の詳しい性質を調べていくことが可能です。例えば、今回の発見では惑星の質量は地球の30±19倍と推定されましたが、今後も観測を続けることにより正確な惑星質量の測定と、他の惑星の存在も調べることが可能です。また、惑星の軌道がきれいな円軌道なのかあるいは楕円軌道なのか、惑星の公転軸が主星の自転軸に対して傾いているのかどうかといったことも調べられます。さらに2018年以降に打ち上げられる予定のジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡などで観測すれば、惑星の大気の情報も得ることができると期待されます。

K2-105bは地球のように生命を育めるような環境の惑星ではありませんでしたが、今回惑星を発見確認した研究手法は2018年に打ち上げられる予定の次世代トランジット惑星探索衛星TESSと地上望遠鏡との連携観測の予行演習とも言うべきものであり、来るTESSの時代に、日本の望遠鏡と観測装置が、第2の地球とも呼ぶべき生命を育めるような惑星を発見していくことができることを示しています。

 

発表雑誌

雑誌名 Publications of the Astronomical Society of Japan
論文タイトル The K2-ESPRINT Project VI: K2-105 b, a Hot-Neptune around a Metal-rich G-dwarf
著者 Norio Narita*, Teruyuki Hirano, Akihiko Fukui, Yasunori Hori, Fei Dai, Liang Yu, John Livingston, Tsuguru Ryu, Grzegorz Nowak, Masayuki Kuzuhara, Bun'ei Sato, Yoichi Takeda, Simon Albrecht, Tomoyuki Kudo, Nobuhiko Kusakabe, Enric Palle, Ignasi Ribas, Motohide Tamura, Vincent Van Eylen, Joshua N. Winn
DOI番号 10.1093/pasj/psx002
論文URL  https://academic.oup.com/pasj/article/2996561

 

用語解説

注1 TESS

アメリカのマサチューセッツ工科大学主導で進めている、NASAの次世代トランジット惑星探索衛星Transiting Exoplanet Survey Satelliteのこと。2017年2月時点で、2018年3月に打ち上げられる予定となっている。K2計画で観測が行われている黄道面付近を除くほぼ全天を2年間かけて観測し、太陽系に近い恒星のまわりの惑星を探す計画となっている。

注2 トランジット

恒星の前を惑星が通過する、いわゆる食の現象のこと。太陽系外惑星の軌道がたまたま主星の前を通過するような軌道の時に起こる。トランジットをする惑星をトランジット惑星と呼ぶ。

注3 スーパーアース

まだ正式な定義はないものの、太陽系最大の岩石惑星である地球と最小のガス惑星である天王星・海王星の中間の質量・大きさを持つような、太陽系には存在しないタイプの惑星を総称してスーパーアースと呼んでいる。大きさで言うと、地球の半径の1〜4倍の間の大きさを持つ惑星に相当する。大きな岩石惑星と小さなガス惑星の境界にある惑星であるため、必ずしも岩石惑星ではない。

注4 K2計画

2013年にケプラー衛星の姿勢制御装置が故障してしまい、当初の計画が続けられなくなったため、2014年から開始されたケプラーの第2期トランジット惑星探索計画。衛星に残された2軸の姿勢制御装置に加えて、太陽からの光の圧力を3軸目の姿勢制御に用いることで、太陽系で地球が公転している面(黄道面)にある天域を約83日ずつ観測してトランジット惑星を探している。

注5 ESPRINT

日米欧の研究者らによる国際共同研究チームで、チーム名はスペイン語のEquipo de Seguimiento de Planetas Rocosos. INterpretando sus Tránsitos(トランジットによる岩石惑星探索チーム)に由来する。

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―