2014/6/2

宇宙で最強な磁石天体が、磁力でわずかに変形している兆候を発見

発表者

  • 牧島一夫(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 教授/ 理化学研究所 グループディレクター)
  • 中澤知洋(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 講師)
  • 平賀(佐藤)純子 (東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 助教)

発表のポイント

  • あるマグネター(超強磁場をもつと考えられる中性子星の一種)において、回転に伴う8.69秒のX線パルスの到着時刻が、約15時間かけて進み遅れする現象を発見した。
  • これは強い内部磁場により中性子星(注1)がわずかにレモン型に変形し、回転軸のふらつき(歳差運動)が発生した結果であると結論づけた。
  • これは中性子星のもつ強い磁場のうち、内部に隠れた部分の強度を推定した初めての成果であり、中性子星で起きる極限物理現象を理解する上で、大きな進展である。

発表概要

宇宙で最も高密度な天体である中性子星は、太陽程度の質量をもちながら半径はわずか 10 kmで、その表面での重力は、ブラックホールを除くと宇宙最強である。一般に強い磁場をもつ中性子星の中でも、特に磁場の強いものは「マグネター」と呼ばれ、磁気エネルギーを消費してX線を放射すると考えられている。

東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 牧島一夫 教授らと理化学研究所の研究グループは、JAXAのX線衛星「すざく」を用い、4U 0142+61 と呼ばれるマグネターを観測したところ、低エネルギーのX線(軟X線)では中性子星の回転に伴うパルスが8.69秒の一定周期で検出できたのに対し、高エネルギーX線(硬X線)ではパルスの到着時刻が、約15時間かけて0.7秒ほど進み遅れしていることを発見した。これはこの天体が球形から0.01%ほどレモン型(注2)に変形し、そのため天体の対称軸が首振り運動(自由歳差運動)をする結果と結論付けた。軟X線は軸の近くから発生しているためパルス間隔が一定であるのに対し、硬X線は少し外れた場所で放射されるため、首振りに伴いパルス間隔がふらつくと解釈できる。強い重力にもかかわらず、このように変形が生じるのは、星の内部に潜む強い磁場の磁力による可能性が高い。変形量を説明するのに必要な内部磁場の強度は1012テスラ(T)と、考えうる極限に近い値であった。中性子星の内部に潜む磁場が観測から推定されたのは、これが世界で最初である。

発表内容

図1

図1:ラグビーボールの動き。対称軸回りの自転と、対称軸の首振り(歳差運動)がある(©牧島一夫)。

拡大画像

図2

図2:X線 (紫;米国チャンドラ衛星) で見た、かに星雲の画像を、可視光と重ねたもの。中心の白い点がパルサー。

拡大画像

(1) はじめに:野球のボールとラグビーボール

野球のボールはほぼ球形で、投手がボールを水平軸の回りに回転させると直球、鉛直軸の回りに回転させるとシュートやスライダー、回転を抑えるとフォークボールになる。一方、ラグビーでは細長いレモン型のボールが使われ、パスの際はその長軸回りにボールを回転させるが、この長軸(対称軸;注3)自身も図1のように、進行方向に対して一定の角度αで首振り運動を行うことができる。この現象は自由歳差(さいさ)運動と呼ばれる(注4)。このとき、首振り角αや回転の早さは自由に選べるが、自転周期と首振り周期の比はボールの形(注5)で決まっていて、ラグビーボールの場合、つねに3:5である。すなわち首振りより自転の方が少し速くて、ボールが5回転する間に、長軸は3回の首振りを行う。ボールを丸くしてゆくと、この比は次第に1:1に近づき、完全に球形だと2つの周期が一致して自転と歳差運動の区別がなくなる。このように、球対称ではないが軸対称な物体では、対称軸まわりの自転と、対称軸そのものが首を振る歳差運動とが分離し、それらが異なる周期をもつのである。

(2) 中性子星とマグネター

太陽の約10〜30倍の質量をもつ星では、進化の最期にその中心部が重力でつぶれて超新星爆発を起こし、大部分の質量が吹き飛ばされるとともに、中心部では電子と陽子が合体して中性子になり、それらがぎっしり詰まった高密度な天体、すなわち中性子星(注1)がのこされる。それらは質量が太陽の1.4倍ほどある一方で、半径はわずか 10 kmしかなく、宇宙で最も高密度の天体で、表面での重力は地球の重力の2×1011倍にも達する。もともと星がもっていた磁場が凝縮されるため、中性子星は一般に108 Tに達する磁場の強さ(注6)をもつ。中性子星の多くは、回転につれ周期的な電波やX線を出す天体、すなわちパルサーとして観測され、銀河系内で約2000個が知られている。最も有名なのは、1054年に発生した超新星の残骸「かに星雲」の中心にある「かにパルサー」で(図2)、1秒間に30回も回転している。

中性子星には、図2の例のように回転エネルギーを用いて輝く「回転駆動型」、普通の星と連星(注7)をなしそのガスを吸い込んでX線を出す「重力駆動型」などがあり、それに加えて「磁気駆動型」、あるいは「マグネター」とも呼ばれるものもある。マグネターは通常の中性子星より百倍〜千倍も強い1010-1011 T の双極子磁場(注8)をもち、その磁気エネルギーを解放することでX線を放射すると考えられている。このタイプの中性子星は現在、銀河系と大小マゼラン雲の中に約30個が知られており、毎年、1〜数個が新たに発見されている。

(3) 「すざく」によるX線観測

東京大学と理化学研究所の研究グループは、JAXAの宇宙X線衛星「すざく」を用いてマグネターの研究を進めてきた。「すざく」は、光子エネルギー0.5〜10 keV(キロ電子ボルト)の軟X線を捉えるCCDカメラ (XIS) と、10〜数百 keV の硬X線に感度をもつ硬X線検出器(HXD)を搭載している(注9)。マグネターのX線スペクトルは図3のように、どれも軟X線と硬X線の顕著な二成分からなり、それらはXISとHXDの感度帯域に合っているため、「すざく」はマグネターの研究に威力を発揮している。研究グループが選んだ天体は、図3に青色で示された代表的なマグネター 4U 0142+61(注10)で、観測は2007年8月と2009年8月に2日づつ、計2回行われ、4U 0142+6 からのX線はほぼ同じ強度で検出された。

2007年の観測では、軟X線成分も硬X線成分も、このマグネターの回転周期である 8.68878 ±0.00005 秒の周期で、安定なパルス(強度の周期的な変動)を繰り返していた。2009年の観測では、軟X線のパルス周期は 8.68891±0.00010 と少し長くなっており、これは過去に知られた、この天体の回転の遅くなり具合からの予測と良く一致していた。また折り畳んだ(注11)パルス波形は図4(a)のように検出された。ところが2009年の硬X線成分は、強度は2007年の時とほぼ同じであるのに対し、この周期でデータを折り畳んでも(注11)、図4(b)の黒のようになり、2007年の時にくらべてずっとパルス振幅が小さく、様子が違っていた。

そこで詳しく調べたところ2009年の硬X線データでは、パルスがピークを迎える時刻が約15時間の周期で、予測より最大0.7秒ほど、遅れたり進んだりしている(到着時刻が変調されている)ことを突き止めた。その証拠に、個々の硬X線光子の到着時刻に、この進み遅れのぶんだけ補正を行ってからデータを畳み込むと、図4(b)に赤線で示すようにパルスは顕著になり、ほぼ2007年の結果と矛盾がなくなった。面白いことに、2007年のHXDデータではそのようなパルスの位相変調は見られず、また2007年と2009年のXISデータでも、そのような効果は検出されなかった。これは2007年の硬X線パルスと、2007年および2009年の軟X線パルスが、どちらも到着時刻の補正など行わずに検出できたことと整合している。

(4) 結果の解釈

このようにパルスの到着時間が変調される現象は、決して珍しくない。重力駆動型パルサーの場合、パルサー(中性子星)が相手の星と互いの周囲を公転しているので、その地球から見た距離が公転周期に同期して変わり、到着時刻が周期的に進み遅れする。しかし4U 0142+61 を含め、マグネターにはそのような相手の星は居らず、仮にいたとするならば、軟X線でも硬X線でも2回の観測でひとしく同じ効果が見えたであろう。そこで研究グループは以下のように考えた。

  1. この中性子星は、対称軸のまわりに自転するとともに、ごくわずかに球形からずれているため自由歳差運動を行うことができると仮定する。またその首振り角α(図1, 図5)は0ではないとする。
  2. 軟X線は図5で、対称軸の方向に最も強く放射されていると仮定する。すると首振りに同期して、放射の方向がサーチライトのように向きを変え、観測される軟X線の強度にパルスが生じる。しかしこのとき放射は対称軸の回りに対称なため、中性子星が対称軸回りに自転しても何も変化せず、よって自転は検知できない。
  3. 硬X線も、2007年には(ii)と同様な状況にあったため、自由歳差運動に同期した硬X線のパルスが観測されたと考えられる。
  4. 2009年には硬X線が最も強く放射される方向が対称軸から少しずれ、図5の赤点アの向きに来たと仮定する。簡単のためレモン型変形を考えると、自転は歳差よりもわずかに速いので、8.69秒ごとに対称軸が首振りで同じ位置に戻って来るたびに、赤点は少しずつ先に進み(図5のイ)、そのため観測者から見ると、硬X線パルスがピークを迎える時刻が早くなる。このパルスの進みは図5のウで最大になるが、その後は減少して図5のエでゼロになり、やがてパルスは遅れ始め、図5のオで最大の遅れになり、15時間かけて図5のアの位置に戻る。
  5. 以上の仮定に基づくとこの天体は、周期 8.69秒の首振りを約6200回だけ行う15時間の間に、それよりちょうど1回だけ多く(もしくは少なく)自転しているという描像になる。よって対称軸まわりの慣性モーメント(注5)は、直交する軸まわりに比べ、割合にして1/6200 = 1.6×10-4 だけ小さい(レモン型の場合)または大きい(ミカン型)と計算される。中性子星が一様な密度をもつと仮定すると、対称軸方向と赤道方向で、半径が約0.01 %、すなわちわずか1mだけ異なるという結論に達する。

(5) なぜ変形したのか

残る課題は3つある。1つは中性子星の変形がレモン型かミカン型かというもので、観測からは決定できないが、レモン型の可能性が高いと言える。なぜなら回転エネルギーが散逸(注12)すると、レモン型だと首振り角αは徐々に増大すると期待されるのに対し、ミカン型だと逆に首振り角αは時間とともに0に近づき、2009年に観測されたような現象は見られなくなると期待されるからである。

2つ目は、強い重力で球形になるはずの中性子星が、なぜ1万分の1ほど変形したかである。地球の変形は遠心力(注13)のためだが、4U 0142+61の回転周期は8.69秒と、中性子星としては遅いため、遠心力による変形は1億分の1ほどであり、観測から示唆される1万分の1を説明できない。さらに遠心力だとミカン型の変形なので上の考察に矛盾する。そこで残る可能性は、強い磁力による変形である。図6のような内部に隠れたドーナツ状の磁場(トロイダル磁場)はレモン型の変形を引き起こすことが知られているので、最有力候補となる。観測された変形量から推定すると、1012 T という強いトロイダル磁場の存在が示唆される。4U 0142+61の場合、外部に出ている双極子磁場は(注8)の方法で1.3×1010 Tと測定されるので、100倍近く強い磁場が内部に潜んでいるという結論に達する。

3つ目に研究グループは、2007年に対称軸の近くにあったと思われる硬X線の発生領域が、2009年にはそこからずれたと考えたが、どうやって移動したという問題が残る。研究グループは図6に描くように、強いトロイダル磁場の一部は星表面から顔を出しており、硬X線はそのように局所的に磁場が強まった領域で、何らかの機構で作られていると考えている。内部磁場の変化に伴い、そうした磁場の強い領域が移動したとすれば、観測結果が説明できる。

(6) 意義と今後の見通し

マグネターが極めて強いトロイダル磁場をもつことは、理論的に提唱されていた。それは、重く回転の速い星の中心部が、重力でつぶれてマグネターができる際、強い微分回転 (中心ほど速くなる回転) により磁力線がぐるぐる巻きになり、図6のようにトロイダル磁場が形成されるという考えである。従来それを観測から見極める手段は無かったが、今回の成果はこの難題に初めて突破口を開く成果となった。研究グループは今後、「すざく」などで観測された他のマグネターで、同様の自由歳差運動が起きている可能性を探る計画である。

研究グループはまた「すざく」の後継機となる ASTRO-H 衛星を2015年度に打ち上げるべく、諸外国の研究者と協力し、その建造に注力している。同衛星は「すざく」より10〜100倍も高い硬X線感度をもつため、「すざく」で検出された自由歳差運動の様子を、手に取るように明らかにできると期待され、変形がレモン型であるという確証も得られる可能性が広がる。これにより中性子星の磁性の研究が大幅に進むと期待される。

こうした研究の終着点として解明すべき課題は、マグネターに代表される中性子星の強烈な磁場が、どのように保持されるかである。一般には、残った陽子が細長い多数の渦を作ることで磁場を生んでいるという「電磁石説」が信じられているが、研究グループは、中性子のスピンが整列することで磁場が生じるという「永久磁石説」を提唱してきた。このとき中性子星の中ですべての中性子が整列すると、1013 T まで達すると予測されるので、この考えが正しければ、4U 0142+61の内部に潜む磁場は、可能な最大値に近いといえるかもしれない。

発表雑誌

雑誌名
Physical Review Letters Vol. 112, Issue 17, id.171102 (April 30, 2014)」
論文タイトル
"Possible Evidence for Free Precession of a Strongly Magnetized Neutron Star in the Magnetar 4U 0142+61"
著者
Makishima, K., Enoto, T., Hiraga, J. S., Nakano, T., Nakazawa, K., Sakurai, S., Sasano, M., and Murakami, H.
DOI
10.1103/PhysRevLett.112.171102

図3:「すざく」で観測した4個のマグネターのX線スペクトル。10 keV 以下の軟X線はXIS装置、10 keV以上の硬X線はHXD装置のデータ。本研究に登場する天体のデータは青色で示す(©榎戸輝揚)。

拡大画像

図4:「すざく」で2009年に観測した、4U 0142+61のパルス波形。(a)はXISで受けた軟X線パルス、(b)はHXDで検出した硬X線パルス。どちらも 8.68899秒で折り畳んである(注11)。(b)の黒は硬X線パルスの到着時刻の進み遅れを補正する前、赤は補正後。投稿論文のFig.1より改変。

拡大画像

図5:軸対称な剛体の自由歳差運動。青矢印はその対称軸、αは首振り角、赤点は2009年のデータで硬X線強度が最 (パルスのピーク) になる方角。投稿論文のFig.3より。

拡大画像

図6:マグネターの磁場の模式図。紺色は外部に出る双極子磁場、赤は内部に隠れているトロイダル磁場。赤い磁力線は星を赤道方向に縮め、紺色の磁力線は広げる力を及ぼす。軟X線放射域を緑、硬X線放射域をオレンジで示す(©中野俊男、牧島一夫)。

拡大画像

用語解説

注1 中性子星
ほとんど中性子だけでできた、きわめて密度の高い星のこと。通常の物質では原子どうしの間隔はほぼ電子の軌道サイズで決まるが、中性子星の中では中性子のサイズで決まり、これは電子の軌道サイズの約10万分の1 (10-5) に当たる。よって中性子星の半径は、太陽に比べて5桁(地球に比べても約3桁)も小さく、ほぼ10 kmとなる。
注2 レモン型
対称軸(注3参照)をもつ物体のうち、対称軸に沿って細長いものをここではレモン型と呼び、逆に対称軸に沿って押しつぶされた形のものを、ミカン型と呼ぶことにする。対称軸は、レモン型の場合は長軸、ミカン型の場合は短軸と呼ばれることもある。
注3 対称軸
簡単のため密度が一様な剛体 (大きさをもつが変形しない物体) を考え、それをある軸の回りに回転させたとき、観測者から見た形が同じに保たれるならば、その軸を対称軸と呼ぶ。レモンやラグビーボールの長軸、コマの軸、ミカンでは短軸などがその例である。
注4 自由歳差(さいさ)運動
軸対称な剛体(注2)が行う基本的な回転運動のことで、対称軸の回りに自転しつつ、その対称軸そのものが、首振り運動を行う。スピン型人工衛星などで見られ、ラグビーボールの首振りもこの現象である。他方、回転するこまの軸がゆっくり首振りをする現象は良く知られているが、これは重力が働く結果であり、自由歳差運動ではなく、「外力による歳差運動」と呼ばれる。地球の地軸が2万6000年の周期で動く現象も、自転によりミカン型に変形した地球が太陽や月の重力の影響を受けるためなので、やはり外力による歳差運動である。地球も原理的には24時間にごく近い周期で自由歳差運動をすることができるが、その首振り角はたいへん小さい。
注5 ボールの形と慣性モーメント
ボールの形は、慣性モーメントと呼ばれる量で特徴づけられる。ラグビーボールの場合、長軸まわりの慣性モーメントIzを3とすれば、それに直交した短軸回りの慣性モーメントIxが5ということになる。もし物体が一様な密度を持つ回転楕円体であれば、長軸回りと短軸回りの慣性モーメントの相対的な差は、ΔI≡(Ix-Iz)/Iz = (a/b)2 -1と書くことができる。ここに a は長軸半径、b は短軸半径を表す。
注6 磁場の強さ
より正確には、磁束密度と呼ばれる量で、その単位としては T (テスラ) またはG(ガウス)が使われ、1テスラは1万ガウスである。地磁気は約45 μT、黒板マグネットは数十 mT、強力なネオジム磁石は200 mT に達する。導体の環を急速に縮めると、その内部を貫く磁束(磁力線の本数)は保存されるので、磁束密度は面積に反比例して強くなる。
注7 連星
2つの星が重力で引き合い互いの周囲を公転している系を、連星と呼ぶ。両者の間に働く重力と、公転による遠心力が、釣り合っている。
注8 双極子磁場
図6に紺色で示すような磁力線群のこと。短い棒磁石のまわりにできる磁場もこの型で、星から外部に出る磁力線の最も基本的な配置でもある。中性子星の場合は、観測されるパルス周期とその伸び率から自転エネルギーの減少率を求め、それが磁気双極子放射と呼ばれる過程で出て行く仮定して、双極子磁場の強さを推定できる。マグネターでは、X線の光度は自転エネルギーの放出率を大きく越えるので、自転エネルギーが磁場を介して放射にゆく分よりずっと大きなエネルギー量が、磁場そのものの解放で発生していると考えられる。
注9 XIS装置とHXD装置
共著者のうち牧島と中澤はHXDの開発に、また平賀はXISの開発に貢献し、さらに全員が「すざく」の軌道上較正や運用などに貢献している。
注10 マグネター 4U 0142+61
この名前の4Uは、世界初の宇宙X線衛星 Uhuru (ウフル、アメリカが1970年に打ち上げ) が作成した宇宙X線源カタログの第4版を意味し、0142+61は天球上の座標を表す。星座はカシオペア座で、ほぼ銀河面に乗っている。
注11 データの折り畳み
天体観測では信号が弱い場合が多く、データの中に心電図のごとく1つ1つのパルスが見えない場合も多い。その時はデータを、知られている周期ごとに区切り、周期の始まりを揃えて重ね合わせてゆくと、雑音が打ち消し合い、パルスがはっきり見えてくる。これをデータの折り畳み(あるいは畳み込み)という。例として、1時間ごとの気温の測定データが数ヶ月ぶんあったとき、一日の気温の変化を知りたければ、午前0時の気温をすべて平均して値を求め、午前1時の気温をすべて平均し、というように1日の各時刻の平均気温を求めると精度が向上する。これが折り畳み解析である。今回のように周期の不定性が大きい場合には、いろいろな値を仮定してデータを重ね合わせ、パルスが最も顕著に見える周期を探す方法が採られる。
注12 回転エネルギーの散逸
天体の内部の摩擦などで、回転の角運動量が一定に保たれながら、回転エネルギーが徐々に減少してゆくことをいう。ミカン型物体では首振りなし(α=0)がエネルギー極小(安定)で、α=90°がエネルギー極大(不安定)なので、放っておくと首振りが減衰してゆく。一方、レモン型物体では逆になる。たとえばロケットで衛星を打ち上げるとき、ロケット最終段は衛星にスピンを与えて軌道投入する場合が多い。しかしこのとき衛星は通常は縦長のレモン型で、この状態のスピンは不安定であり、放っておくと激しく首振りをする状態になる。それを避けるため、速やかに太陽電池パドルを展開してミカン型に移行させるのが普通で、2005年7月10日にM5 ロケットで「すざく」が打ち上げられた時も同様であった。
注13 遠心力による変形
地球の赤道上では、遠心力は重力の約 1/300 である。よって重力の比でいうと、4U 0142+61より地球の方が、ずっと強く遠心力の効果を受けている。