2007/3/30

赤外線天文衛星「あかり」による観測結果、日本天文学会で発表

- 「あかり」が見た星生成領域、終末期の星、超新星残骸、活動銀河核、遠方銀河 -

発表者

  • 尾中 敬(東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 教授)
  • 石原 大助(東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 学術支援研究員)
  • 松原 英雄(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部 教授)
図

(右図)「あかり」搭載近・中間赤外線カメラ(IRC)によるIC4954/4955を含む1°x1°の9, 18ミクロンのカラー合成図。

(左図)右図のIC4954/4955領域のIRCによる9, 11, 18ミクロンの詳細な拡大図。一千万年前に起きた星生成活動により右図の中心部分に暗い穴が生じ、これが引き金となり、左図の円弧中心の第2世代の星を生み、現在第3世代の星が円弧状に生まれているところが映し出されています。

概要

昨年2月に打ち上げられた日本初の赤外線衛星「あかり」が行った観測結果の初期成果を発表します。「あかり」の観測により、2ミクロンから180ミクロンまでの赤外線で、星形成領域、終末期を迎えた星、超新星の残骸、活動銀河核、遠方の銀河などの観測を行い、多くの天体現象が解き明かされ始めています。東京大学大学院理学系研究科のグループは搭載されている望遠鏡及び近・中間赤外線カメラ(IRC)を共同開発してきました。

発表内容

星は、その質量により進化する道が異なります。太陽よりかなり重い星は、超新星となり一生を終えます。超新星は、暴走的に核合成が進み爆発を起こし、明るく光る現象で、この爆発現象の残骸が、超新星残骸です。超新星爆発は、次の星になる物質を宇宙空間にばらまきます。一方太陽と同じ程度の質量の星は、中心部の水素が燃え尽きた後、赤色巨星と呼ばれる段階を経て、ゆっくり(1年間に太陽質量の100万分の1個分以下の質量を放出)とその質量を宇宙空間に放出して最後には白色矮星となります。この現象を質量放出と呼び、最終的には、元の星の質量の1割から4割程度の物質を宇宙空間に放出すると考えられています。ここで放出された物質も次の星の原料となります。新しい星は、これらの原料をもとに、星間物質の密度が高くなった星間雲で生まれると考えられています。星が生まれるきっかけはさまざまですが、特に超新星爆発や質量の大きな星の放射エネルギーにより星間物質が掃き集められ、密度が高くなって誘発される現象が知られています。ここで生まれた星は、超新星あるいは赤色巨星へと進化し、次の世代の原料を宇宙空間に供給します。このようにして星の進化、超新星爆発あるいは質量放出、星生成の誘発を通じて、銀河は進化を続けると考えられています。銀河の進化のそれぞれの鍵となる過程を研究する上で赤外線観測は非常に重要です。宇宙空間に放出された物質は、星からの光を吸収することや、星間物質と衝突して温められ、赤外線で光ります。星が生まれる領域は密度が高く、星からの光は星間物質により遮断されるため、可視光による直接の観測は困難です。吸収した光は赤外線で再放射されます。このことは遠くの銀河についても同じです。特に生まれたばかりの銀河は、大量の星間物質に覆われていることが予想されるため、その性質を知るには赤外線観測が大きな役割を果たします。

今回発表する「あかり」の成果は、銀河系内での物質進化のそれぞれの過程を研究した、星生成連鎖、超新星残骸、及び赤色巨星からの質量放出と、遠くの銀河での中心にあるブラックホールをとりまく星間物質の研究と、生まれたばかりの銀河を赤外線で探して銀河の進化を調べた以下の5件の研究をとりあげます。

1.「あかり」の広域観測が明らかにした星形成の系譜 - こぎつね座IC4954/4955星雲領域の3世代にわたる星形成 -

「あかり」の7つの波長での観測により、3世代にわたる星形成の証拠を赤外線で初めて捉え、我々の銀河系でどのようにして星が生まれているかを知る手がかりを得ました。(図を参照してください)

2.初めて赤外線でとらえた小マゼラン雲の超新星残骸 - 小マゼラン雲中の超新星残骸の赤外線での検出-

3ミクロンから11ミクロンの赤外線で、初めて小マゼラン雲の中の超新星残骸を検出し、超新星残骸と周囲の星間物質との相互作用を明らかにしました。

3.「あかり」がとらえた円熟期の星の姿 - 球状星団NGC104の中の若い赤色巨星からの質量放出現象の発見 -

「あかり」による波長3ミクロンから24ミクロンでの観測により、比較的若い赤色巨星から、これまで検出されていなかった質量放出が起きている証拠を見つけました。この結果は、円熟期から終末期に向かう星の進化に新しい知見を与えます。

4.赤外線でせまる巨大ブラックホールを持つ活動銀河核のまわりの分子ガス - 超高光度赤外線銀河UGC05101の活動銀河核のまわりの分子ガスの検出 -

「あかり」は、活動銀河核と呼ばれる巨大ブラックホールを、数百度Cの高温分子ガスや低温の氷が取り囲んでいる証拠を見つけ、活動銀河核の構造を解き明かす重要なデータを得ました。

5.「あかり」宇宙で活発に星が作られた時代を確認 - 波長15ミクロンの深宇宙探査 -

「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラにより、広い空の領域にわたり、15ミクロンで現在最も暗い銀河までの観測を行い、多くの銀河を検出しました。この結果は、宇宙では、約60億年以上前から数十億年にわたり現在より星が盛んに生まれていた時代があったことを示すものと考えられます。

「あかり」は宇宙航空研究開発機構 (JAXA)のプロジェクトで主に名古屋大学、東京大学、自然科学研究機構・国立天文台、欧州宇宙機関(ESA)、英国Imperial College London、University of Sussex、The Open University、オランダUniversity of Groningen/SRON、韓国Seoul National Universityの協力で進められており、遠赤外線検出器開発では情報通信研究機構の協力を得ています。