2014/01/20

井出哲氏の日本学士院学術奨励賞受賞によせて

2013年12月に井出哲(いで さとし)氏の日本学術振興会賞受賞が公表され、その受賞についての記事は既に理学系HPに掲載されています。

日本学士院は、日本学術振興会賞受賞者(計25名)のうちから、「優れた研究成果をあげ、今後の活躍が特に期待される若手研究者6名」を日本学士院学術奨励賞受賞者として選抜して、井出氏はその一人となりました。なぜ優れた有資格者25名のうち、井出氏が「特に期待される若手研究者」として選ばれたかは憶測にすぎませんが、彼の研究分野(地震発生過程)の重要性にあると考えられます。

2011年3月11日の東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故は日本にとって大きな打撃となりました。地震科学分野の研究者にとっても3.11は大きなショックでした。日本地震学会は2011年2012年に秋季大会で特別シンポジウムを開催 して、3.11の教訓及びこれまでの研究の総括についての議論を行いました。

事情を要約すると、3.11前に世論は地震科学の応用(地震予知・予測など)に大きな期待を抱いていたが、3.11はそれを裏付ける理論が充分ではなかったことを明らかにしました。従って、地震科学分野の当面の課題は、振り出しに戻って、地震発生過程の新パラダイムを構築することです。念のために、新パラダイムの構築が成功したとしても、必ずしも期待されている応用ができるとは限りません。

東京大学の教員と卒業生は130年以上にわたり地震科学に大きな貢献を果たしてきました。明治にジョン・ミルン氏 (1850-1913、英国)は工学部の鉱山分野の教授(任期付)として採用され、地震学を学問の分野として切り開きました。 大森房吉氏(1868-1923、ミルンの教え子)は明治と大正に大きな実績をあげました。昭和に理学部を卒業して、東大教員 を経て、アメリカの大学の教員になった安芸敬一氏(1930-2005)と金森博雄氏(1936-)は優れた業績を上げました。井出氏 はそれらの偉大な先輩と同程度の貢献をすることが期待され、日本学士院学術奨励賞を受賞したと思われます。

(文責:地球惑星科学専攻 教授 ロバート・ゲラー)

 

日本学士院学術奨励賞受賞者決定について
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2014/011401.html

 

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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