2012/01/12

1/12 物理学専攻助教松永隆佑さんが第28回井上研究奨励賞を受賞

受賞理由「半導体カーボンナノチューブの励起子構造に関する研究」

 物理学専攻助教の松永隆佑氏が、過去3年間に優れた博士論文を提出した若手研究者に対して送られる井上研究奨励賞を受賞しました。松永氏は博士論文(京都大学 2010年)の研究で、半導体カーボンナノチューブの光物性、特にその励起子構造の解明に、顕微分光の手法を用いて取組みました。カーボンナノチューブは、1次元性を反映して電子と正孔間に強いクーロン相互作用が働き、電子と正孔の束縛状態、「励起子」が室温でも安定に形成されます。カーボンナノチューブには光学遷移許容の明励起子の他に、禁制の暗励起子が存在することがバンド構造から予測されており、暗励起子のエネルギー構造を決定することはその光物性を理解する上で重要な課題となっていましたが、これは理論的にも実験的にも困難な問題でした。松永氏は、ナノチューブに円筒断面を貫く磁束を印加してアハラノフ・ボーム効果を生じさせることで、光学遷移禁制の暗励起子の発光を観測することに成功し、そのエネルギー準位を精密に決定しました。さらに、カーボンナノチューブに正孔ドーピングを行い、励起子にさらに一つの正孔が結びついた3体の束縛状態であるトリオン(荷電励起子)の観測に初めて成功しました。有機物質等の交換相互作用が非常に強い物質系において、多体粒子系がどのような多体の束縛状態をとりうるかは未解明の問題であり、カーボンナノチューブのトリオンの発見はその物性解明に向けての大きな進展になると期待されています。

(文責:物理学専攻・准教授 島野 亮)


松永隆佑助教


【外部リンク先:財団法人井上科学振興財団】
http://www.inoue-zaidan.or.jp/b-01.html?eid=00015

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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