2010/11/15

11/15 日本物理学会若手奨励賞受賞者の紹介

11月11日に第5回(2011年)日本物理学会若手奨励賞(Young Scientist Award of the Physical Society of Japan)が発表され(http://www.soc.nii.ac.jp/jps/WakateA/wakate2011.htm)、物理専攻からは4名の方々の受賞が決まった。栄えある受賞を祝すとともに、今後のますますの活躍を期待したい。以下、受賞者の方々の業績を御紹介する。

吉田鉄平氏 物理学専攻助教(藤森研究室)

吉田鉄平氏は、角度分解光電子分光を用いた強相関電子系の物性研究が専門。受賞対象となったLa系高温超伝導体の研究では、不足ドープ領域の途切れたフェルミ面(フェルミ・アーク)の観測、超伝導相における2成分ギャップの観測など、高温超伝導機構の解明の鍵になると思われる重要な知見を得た。


吉田鉄平氏



阿部喬氏 物理学専攻特任研究員(大塚研究室)

阿部喬氏は、密度が低い中性子物質の第一原理計算をQCD(量子色力学)に基づいた大規模格子計算により世界で初めて行った。その結果、1S0超流動ペアリングギャップが、伝統的なBCS計算の70%程度しかないことや、短距離の対相関に起因する擬ギャップの存在を示し、通常の原子核の密度の10分の1から1万分の1程度の低密度領域でさえ中性子物質では量子多体効果が重要であることを示した。


阿部喬氏



金澤拓也氏 物理学専攻博士課程三年(初田研究室)

中性子星の中心部のような1012kg/cm3を超える超高密度状態では、カラー超伝導相と呼ばれるクォーク物質が実現すると考えられている。金澤拓也氏は、山本直希氏(ワシントン州立大学)、T. Wettig氏(レーゲンスブルグ大学)と共同で、カラー数が2の高密度クォーク物質に対応する、強い非エルミート性を持つ新しいランダム行列理論を構築し、その解析的性質を解明した。


金澤拓也氏



沙川貴大氏 物理学専攻博士課程三年(上田研究室)

沙川貴大氏は、ミクロな自由度を観測制御できる状況下で熱力学がどう変更されるかという長年の問題(いわゆるマックスウェルの悪魔)に解答を与えた。この問題は、ナノテクノロジーの発展によって現実の問題になりつつある。沙川氏の研究は、情報と熱力学が融合する「情報熱力学」を開拓するものである。


沙川貴大氏



(文責:物理学専攻長 早野龍五)

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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