東京大学理学部 学生座談会

東大理学部の明日を描く
理学系研究科で活躍する、学生および若手研究者に、それぞれの夢と研究、そして必要な支援について伺いました。
鳥田明典
地球惑星科学専攻
多田研究室
鳥田明典 (修士2年)
中国のタクラマカン砂漠の地質調査研究
西村優里
物理学専攻
山本研究室
西村優里 (修士1年)
チリにあるアルマ望遠鏡や国立天文台で研究
松平一成
生物科学専攻
人類生物学・遺伝学研究室
松平一成 (特任研究員)
タイの国立公園でテナガザルを研究

私たちはこんな研究をしています

烏田
人に歴史があるように、地形にも歴史がある。どうしてこんな地形になったんだろうという過去のプロセスに興味があるんです。いまは中国のタクラマカン砂漠が砂漠化した時期と、その原因を研究しています。砂漠になった南部に、山脈ができたことで乾燥が進んだのですが、同時に山からの砂が供給されたことも砂漠化の原因だと考えていて、現地で調査をしています。
松平
僕は小さいころから野生動物に興味がありました。中学のときに霊長類学が日本で進んでいることを聴き、この分野に決め、今はタイのカオヤイ国立公園でシロテテナガザルの社会構造を研究しています。テナガザルは、類人猿の中で唯一、雌雄ペアの家族をつくり、ヒトのような社会構造をつくっています。調べていくことで、ヒトとチンパンジーの祖先が分化した頃の社会が見えてくるんじゃないかと興味を持っています。
西村
私は自然の世界を数式で表す物理学に惹かれ、物理学科に進学しました。人類永遠の疑問を多く抱える宇宙物理学を専攻し、いまは電波望遠鏡を使って星や惑星系の成り立ちを調べています。これまで、長野県の野辺山やチリのアタカマ砂漠で観測を行ってきました。研究室では観測研究と共に、観測装置の開発も行っています。今後、サイエンスとエンジニアリング、両方を学びながら、自作の装置で観測することにも挑戦したいです。

支援をいただいて可能になること

烏田
中国の田舎は電話が通じません。私の調査地域は、滞在する町から300km以上離れています。現地でトラブルに巻き込まれた時に、日本と連絡する手段がないのが恐いですね。衛星の携帯電話を持たせてもらうなど、何かサポート態勢があれば助かるなといつも思っています。
松平
確かに海外での現地調査ではとても重要ですね。僕の場合は、研究以前にビザの申請や受け入れ機関との事務手続きに最も時間を取られます。
烏田
それは私も実感します。かつての経験ですが、中国から土壌を輸入する際、2年前に調査した資料が1年半も日本に届かなかったことがあります。検疫の事務や法手続きが円滑に進まない環境は大変ですね。研究費や旅費はどうされていますか?
松平
僕はD5から研究員にしていただき、科研費から研究資金をいただいています。タイへの2回の渡航は、海外渡航の助成金と笹川科学研究助成のおかげで可能になりました。テナガザルは寿命が長く、40年程生存しますし、それぞれ個性も強く個体差があるので、研究には長い時間がかかります。
西村
私は幸い、文科省のリーディング大学院の奨学金をいただけており、本当にありがたいことです。ですが審査があり、限られた学生にしかいきわたりません。多くの学生に安定的に支援があるとよいなと思っています。

科学を進める原動力は、博士課程へ進学する学生です。しかし研究費は不安定で、奨学金も十分ではありません。特に海外で活躍する若手の支援資金をどう確保するかが切実な問題になっています。

理学は人類共通の大きな夢や未来を描くことができます。是非多くの皆様にご支援をお願いできればうれしく思います。

写真:貝塚純一