横山先生への質問と回答 - 第10回理学部公開講演会『時間の科学』

横山先生への質問と回答

Q:原子核反応と崩壊についての質問をさせていただきます。原子核のまわりには,電子が回っていますが,14Cが崩壊する際に6個の電子はどうなるのでしょうか。また,14Cが他の原子とともに分子を構成している場合,その分子はどうなるのでしょうか。詳細に説明頂ければ有難いです。
A:14Cは5730年の半減期でβ-崩壊し,14Nに変わります。崩壊時には電子と反ニュートリノが原子核から放出されますが,同時に原子核も運動エネルギーを獲得します。これを反跳エネルギーと呼びます。この反跳エネルギーが電子との結合エネルギーよりも大きければ,14Nの原子核と電子との結合は切れてしまい,14Nの原子核は分子(もしくは原子)から飛び出してしまいます。原子核が飛び出すかどうかは,原子核が獲得する反跳エネルギーと周囲の電子との結合エネルギーとの組み合わせによります。例えばCO2の場合,崩壊した14Cの内の約81%が電子との結合を切ることができずに14NO2+となります。その場合,反跳エネルギーはそのまま分子の運動エネルギーとなります。
Q:年代測定に「C」を利用する理由は?地磁気の影響を受けないか?地球史の中で地磁気のNとSが逆転する現象も起きており,その影響はなかったのか?
A:年代測定にはいろいろな方法があり,核種も様々です。核種を選択する際は,半減期による測定限界を考慮します。14Cの場合,その半減期が5730年ということで,過去50,000年間の年代測定を行うのに適しています。放射性炭素は宇宙線と地球大気との相互作用によって生成されますので,講演でも触れましたが,地磁気の影響を受けます。地球史の中で一番最近の地磁気逆転イベントはおよそ78万年前のブルンヌ・松山イベントです。従って,“逆転現象”の放射性炭素年代測定への直接の影響はありません。しかし地磁気は逆転までいたらなかったものの,エクスカーションとよばれる,磁極が現在の位置から移動するということもあります。これについては過去5万年間にもあったとされ,放射性炭素の生成率に影響を与えています。
Q:深層海流の変動が気候変動に対してcrucialとのお話は大変ためになったが,そのtriggerを引いたものは何なのですか?
A:深層熱塩大循環は塩分と温度差によって駆動されています。講演でも触れましたが,それを動かす重要な海域は高緯度の海洋です。この海域の塩分が下がると深層水の生成が押さえられ,海流全体に大きな影響を与えるとされています。過去におこった急激な気候変動に関して,その引き金となったのは,氷床が部分崩壊してもたらされた大量の淡水の流入であったと考えられています。