プログラムコーディネーターからのメッセージ
20世紀の科学技術の革新は人類に富と繁栄をもたらしました。しかし、科学技術によって飛躍的に拡大した人類の活動は、同時に人類社会の持続的発展を脅かす地球規模の課題を顕在化させることとなりました。特に、わが国は第二次世界大戦以降、高度な科学技術力をもって急速な経済成長を遂げ、先進国としての確固たる地位を築きました。しかし、今日、少子高齢化の中での人口減少、東日本大震災による未曾有の規模の被害、原子力発電所の事故による環境汚染など、かつて経験したことのない難題を抱えています。従来の学問領域の中にはその解決策は見あたりません。これらの課題の解決に挑む為には、分野を超えることが不可欠です。日本が今抱えているこれらの課題は、地球環境の保全、人類の生命を守り健康に暮らすこと、災害やテロなどに備え安全安心を獲得すること、と言った全人類に共通する根本課題を集約したものとなっています。従って、これらの課題を私達が克服することは、人類全体の持続的発展に貢献する新しい知と技を日本から生み出すものとなるはずです。すなわち、これを着実に進めることで、ピンチをチャンスに変え、わが国が国際社会の中での信頼と存在感を高めていくことができるはずです。
私達は、そのような活動を率先するリーダーを育てたいと考えました。そのためには、自らとことん考え、物事の本質を捉える知力を徹底的に鍛えること、そして、それを課題解決に向けて活用する技量を鍛えることが必要です。世界の精鋭達と日々しのぎを削る最先端の基礎科学研究の現場は、論理性をもって本質に迫り広い視点で解決の道を探る能力を鍛える場として最適です。本プログラムでは、そこに、既存の専門分野を超え、課題の本質を俯瞰的に捉え、その解決に向けて知を活用するという視点を身につけるための機能を大学院教育に追加するためのものです。
分野を超えた視点を身につけるきっかけとして、私達は「フォトンサイエンス」を活用することに着目しました。発明から半世紀を迎えたレーザー技術は現在も加速してその革新が続いています。このレーザー技術の革新を牽引力として、フォトンサイエンスは今まさにめざましい発展を遂げています。その成果はバイオサイエンス、宇宙科学、高エネルギー物理学など自然科学のあらゆる分野にとって高度な研究ツールを与えるとともに、情報通信、環境、エネルギーなど現代社会の基盤を支える技術をも提供しています。さらには量子コンピューターのような夢の未来技術をもたらすことも期待されています。このようなフォトンサイエンスのもつ、「基盤性」、「革新性」、「横断性」を存分に活用していきます。ALPSで学ぶことは、それぞれが取り組む博士論文研究にとって良い刺激を与え研究の深みと広がりをもたらすものとなると思います。また、ここで学ぶことは、博士取得後の人生の様々な局面において活かされるものとなると確信しています。
サイエンスを極めることに、目を輝かせ夢をもつ学生諸君に対し、安心して勉学に向かうための環境を整えると共に将来の活躍の場が広がりのあるものとなるように進めていきたいと考えています。意欲あふれる皆様の参加を歓迎致します。
2011 12 27
プログラムコーディネーター 五神真

